里山林を管理する演習(2)

 午前中は前回調査のデータをもとに図表作成,レジュメ作り.
 午後は里山林を管理する演習(2)で,今日は実際の管理作業をおこなった.この演習科目は今年からはじまったものなので,授業として里山林管理をするのは僕ははじめて.けっこうわくわく.
 管理作業のまえに,データをみながら管理方針を検討した.
 圧倒的な優占種(個体数でも被度でも)であるヒサカキを除伐することはすぐに決まった.ヒサカキは胸高以上の樹高をもつものだけでも100平方メートルあたり176本はえていて,樹冠直径から推定した樹冠面積合計は363平方メートルになる.コドラート全体を3回覆い尽くしてまだ余るほどだ.
 つる植物はぜんぶ除伐と言っていたが,学生から「アケビは残したい,たべたいから」「マツブサは残してほしい.前回に同定をして親しみがわいたから」といったリクエスト.どちらも大して大きくはなっていないので,それなら残そうということに. ササはすべて刈り取る.ヒサカキ以外の常緑樹をどうするか.学生から「亜高木層のヤマモモは残したい,たべたいから」とのリクエスト.ほかに「ヒイラギはのこしたい,コドラートに1本しかないから」「シャシャンボは切ってしまうのもったいない,たべたいから」などのリクエスト.亜高木層のヤマモモやヒイラギは切ってしまうと大きなギャップができてしまい,林床のササとかが元気になるかもしれないという理由もつけて残すことに.ヤマモモ,あれは雌なのか?それはしらんぞ.シャシャンボは下層の低木を除伐したあとで,樹冠の張り具合を見てからきめることにした.したがって,高木層・亜高木層では,ヤマザクラ,コナラ,ハンノキ,ヤマモモ,ヒイラギが確実に残るメンバーとなる.シャシャンボは場合によっては亜高木層にのこる.
 あ,亜高木層にヒイラギだのシャシャンボだの,どんな森林やねん,と思われるマニアックなヒトもいるかもしれない.最大のヤマザクラやコナラで12〜13m程度という低い森林です.
 10m×10mを4分割し,4班に分かれ,項目ごとに所要時間を記録しながら作業をおこなった.はじめ,すごいイキオイで作業が進み,授業時間180分の半分でおわってしまうかと危惧されたが,だんだんとスピードが低下.お猿のように木に登ってしまうやつやら,切ったつるでターザンごっこをするやつやら,ターザンごっこで調子にのって定点撮影用のカメラを倒してしまうやつやらが現れた.初期の速度が持続しないということを学んだ.また,休憩時間のほかに,里山林を楽しむ時間を相当多くとる必要があるようだ.
 切った木はすべて林外に運び出した.そのために獣道のような作業道もつくった.運び出した木は,細いものは薪にして,学祭などのイベントでピザを焼くときなどに使うことになるだろう.太めのものは,プレイパーク(実習林でおこなう)の遊具の補修に使うため,集積している.
 林内で処理せず,林外持ち出しとしたことも作業時間が長くなる原因となったが,これは必要な時間だ.100平方メートルをちゃちゃっとやっただけだが,えらい量の木を運び出すこととなった.
 除伐したヒサカキなどの年輪をみてみると,20年前後のものが多く,最大で38年だった.放棄後の年数がだいたいそのくらいのオーダーなのであろう.林床の草本は乏しい.これから,林床に光が入ることでどのように変化するのか興味がある.
 作業中,意外と写真は撮れない.写真・記録係を決めちゃった方がいいかも.
 さて,学生による森林管理の成果をみてみる.林冠に穴をあけるのをおそれてか,背の高いヒサカキネズミモチが刈り残されていた.そこで,それらを材料に,巻き枯らしの実習を行った.みんな楽しそうに巻き枯らしに取り組んでいた.
 次回は後期.12月(落葉後)に管理の成果を確認する.
before
after
 管理後の写真では,管理対象枠外が背景に写っていることもあり,まだまだ切り足りないように見える.
まあ実際のところ,枠内でも8mクラスのネズミモチヒサカキを数本刈り残してしまっている.
 草本層はほんとうに少ない.ネザサを刈り取り,シロダモの実生を除去したら,つるっぱげに近い状態だ.なんか生えてきて欲しい.
 淡路での里山林管理において,何をモデルとするかはもうちょっと考えないといけない.いまのところ,コレといったモデルがあるわけではない.今回の施工地はかつてはアカマツ林だったところ.いまではアカマツはまったく生えていない.