キダチコマツナギとコマツナギのサイズ比較

 コマツナギIndigofera pseudotinctoria Matsum.)は在来の草原生植物.畦畔草原など,頻繁な草刈りを受ける立地でよくみられる.普通に見られる植物だが,圃場整備後の畦畔ではあまりみられない(松村2002).圃場整備の進行にともなって減少しつつある種といえる.
 一方,キダチコマツナギは,近年になって道路法面などの緑化に利用されて目につくようになった植物.中国産コマツナギ種子として緑化に用いられている.しかしこの中国産コマツナギ,実は正体不明らしい.2010年12月に出版された「日本帰化植物写真図鑑 第2巻」(植村ほか編2010)では和名キダチコマツナギとして掲載されているが,学名は「Indigofera sp.」("コマツナギ属の一種"の意味)と表記され,同定が保留されている.上記の在来コマツナギと同種とする見解と,トウコマツナギIndigofera bungeana Walpers)に同定する見解があるためらしい.ひょっとすると輸入される種子はどちらか片方ではなく,これらの両方が含まれるかもしれない.
 花や葉をみるかぎり,在来コマツナギとキダチコマツナギには明確な違いは見いだせない(ネット上ではキダチの方が花序が長いという観察報告はある).ただ,両者の植物体のサイズははっきりと異なる.在来コマツナギの草丈はせいぜい70cmとか80cm,最もよく見るサイズは30cm〜50cm程度である.一方,キダチコマツナギは軽く2mを超える.コマツナギとしてはお化けのようなサイズである.
 教材用として,両者のサイズの違いがわかる写真を撮影した.タイルのサイズは1辺が約30cmで,目地を含めると1ピッチ約32cmである.左の大きい方がキダチコマツナギで,350cm以上あることが写真から分かる.この採集個体は6幹ほどの株立ちとなっていたうちの1幹.いずれの幹も同程度のサイズだった.地際約10cmで伐採した.右下の小さいのが在来のコマツナギ.ナナメに置いてあるが,実際に生えている形もこのくらいのナナメだったので,草丈としては30cmそこそこである.こちらは根ごと掘りとってきた.小さくて軽いために撮影中に風で飛んでいくので,そばにあった脚立を重石にして固定した.このキダチコマツナギと在来コマツナギは,300〜400mほどの距離のところにあった.
 キダチコマツナギ(中国産コマツナギ)については,在来コマツナギとの遺伝的な違いを調べた文献(阿部ほか2004)がある.


左キダチコマツナギ,右在来コマツナギ(いずれも淡路市で採集)


在来コマツナギの花(2012.08.01.淡路市


キダチコマツナギの花(2012.06.28.南あわじ市)