広大な荒野

 今回の地図読みの作業をしてみておどろいているのは,1900年ごろの地形図に表示される植生記号「荒地」のひろがりである.研究の対象は半自然草原だが,地形図からは草原の質まで読み取ることはできない.そこで,農地でも樹林でもない草原的・疎林的景観をとりあえず草原とみなすことにして,明治の地形図にある「草地」と「荒地」を抽出していった.すると地域によっては,地図の過半が「荒地」と表示されていることがわかった.草原の用途は飼料や屋根材の生産であるが,はたしてそんなにも広大な草原を必要としたのだろうか?この疑問に答えるには,当時の人口やら産業やらを把握し,同時に人口や牛の頭数あたりの必要草原面積を知る必要があるので,いまの僕にはすぐには答がだせない.ただ,あまりの広大な荒地・草原・疎林の景観に圧倒されている.
 いまではこれらの場所はほとんどが森林となっている.1900年ごろの地形図の景観はどういったものなのか想像してみる.それは,一昨年に中国雲南省でみた風景(上の写真)と似たようなものだったのではないだろうか.それはそれでキケンな状態かもしれない.いや,阿蘇の草原をそうぞうしてもいいのかもしれないが.