農村の絶滅危惧種

 市民講座の講師。テーマは、農村の絶滅危惧種。淡路島の里地のいきものの豊かさを地元の方に知ってもらいたくて、これまでも何度も講演や市民講座の講師を引き受けてきた。生き物の豊かさを伝えるために、畦畔の可憐な草花を入り口にしたり、行事とのつながりを入り口にしたりしてきたが、今回はじめて「絶滅危惧種」を前面に押し出した。僕はそこらへんにいる普通のいきものが好きなので、絶滅危惧種や希少種を主題とすることはこれまでほとんどなかったが、たまには趣向をかえてみた。
 講座のはじめに受講者の方に農家かどうか挙手してもらった。半数の方が農家だった。つぎに絶滅危惧種をあげてもらったら、ヤンバルクイナのような“希少種かつ絶滅危惧種”と、タガメのような“かつては普通種でいまは絶滅危惧種”が、それぞれ数種類ずつあがってきた。そういうやり取りをしておいて、以下のような話をした。
 絶滅危惧種とは何か。レッドデータブックレッドリスト・IUCNカテゴリー。生息数と減少速度。
 淡路島の農村を構成する景観要素。学生たちが興味を持ち研究対象としてきた畦畔草原・伝統的墓地・ため池・じゅるた(湿田)・素掘り水路。これらの景観要素の成り立ちと、そこに住む絶滅危惧種(じゅるたの部分は修士2年のF君にしゃべってもらった)。
 淡路島に多種の絶滅危惧種や準絶滅危惧種が残されている理由。圃場整備が絶滅危惧種に及ぼす影響。保全と両立可能な圃場整備のやり方を考えなくては。そのためには、生き物を知る人と農業を知る人、農業をしながら身近な生き物を見ている人、いろんな人が知恵を出し合うのがいいと思う。
 大勢の農家の方を前にこういう話をするので、アウェイかと思っていたが、質疑応答が盛り上がっておもしろかった。圃場整備後の畦畔で草原再生をやっているグループがあるとの情報が得られた。これは行ってみなくては。F君にもたくさん質問があびせられた。また、農家の方から、こんなやり方やったらできるで、といったアイディアなどもでてきた。