セルフエクスカーション2(ツキノワグマの野生復帰)

 トレッキングを終え,県境(道境?)を越えてグレという町へ.ここにはツキノワグマの野生復帰をやっている研究所がある.Lさんの知りあいがいらっしゃるとのことで,ここを案内してもらった.僕の理解がまちがっていなければ,つぎのような説明をうけた.韓国では日本が統治していたころに漢方薬のためにツキノワグマの乱獲があり,1980年代には絶滅したと考えられていた.しかし2000年代に入って数頭のツキノワグマがジリサン国立公園で再確認された.個体群動態を予測したところ,2020年には絶滅する可能性が高く,何らかのレストレーションが必要となった.そこで,北朝鮮,ロシア,中国から数十頭のツキノワグマを譲り受け,遺伝子解析や野生化訓練などの後,放獣がおこなわれた.映像をみるかぎり,ハードリリースだ.野生に適応できなかったものは再捕獲し,研究所にて飼育中.これらの繁殖による次世代をまた放獣する予定とのこと.
 この施設は教育施設も兼ねている.というか,ツキノワグマの野生復帰にあたっては,地域の方々の理解を得ることが大変だったろうと思う.小さなシアターがあって,そこで5分くらいの映画を3本見せていただいた.大人向け2本と子ども向け1本.野生復帰の必要性や意義を伝えるもの.その中で,ツキノワグマ放獣をしている区域にたくさんの捕殺用の罠が設置されている問題が描かれていた.国立公園内なのでそのようなものを設置することはそもそも違法だが,シカやイノシシによる農作物への被害対策として,地域の農家が設置しているらしい(クマ捕獲用ではない).放獣したクマがこれらにかかる可能性があり,そもそも違法でもあるので,レンジャーが毎年,何百というトラップを回収しているそうだ.獣害対策の技術は,海外にも売り込めるものがあるのだろうと思った.