モニ1000里地調査

 モニ1000里地植物調査にひさしぶりに同行した.モニ1000里地調査は市民調査員による調査で,NACS-Jがとりまとめてる.市民調査員がこつこつ積み上げたデータから,里地の現在が,そして里地の変化が,少しずつ明らかになっていってる.
 今回の調査には,K都大学の大学院生N浜君とY川君が参戦.N浜君の研究対象植物がこのサイトに生えているので,今後の研究計画のために下見に来た.
 ここ黒谷はモニタリングサイト1000里地調査のコアサイト(全国で18ヶ所のうちの1つ).

 絶滅危惧種が集中しているというほどではないが,ああ,まだここにあったんだ,と,ほっとするような植物がちゃんと生えている.あるべき種がふつうにみられるtypicalな畦畔草原だ.こういう場所がいつまでも残って欲しい.「あたりまえのものが消えていく」ことの積み重ねで,レッドリストに多くの種が載る残念な状況がうまれる.
 ここには4月19日の演習の授業できたばかり.それから2週間で花がずいぶん入れ替わっている.雨に濡れてタツナミソウが咲いている.まるっこくてビロード状の毛に覆われた蕾もかわいい.
 
 ホタルカズラが開花.2週間前にはかげもかたちもなかったが.

 コナスビ絶賛開花中.意外と写真を持っていないのがこういうふつうの植物だ.コナスビは畦畔草原ならどこでもあるような安定感抜群のレギュラーメンバー.濡れて咲くとずいぶんと風情のある花にみえる.この写真は-0.7EVの露出補正をしている.白い花は花弁が白とびしがちなのでアンダーで撮影するが,黄色の花も同様.露出補正なしだと,黄色とびというのか,のっぺりとした濃淡のない黄色でぬりこめられてしまう.びみょうにブレてるのは,今日の写真のほとんどを片手で撮影しているためかも.左手には傘とカメラケースとノートとシャーペンを持ってたから.

 N浜君がツマグロヒョウモン素手でゲト.幼虫の食草はスミレ類.

 クヌギ幼木の幹にアシナガバチ類の巣をみつけた.地上15cmくらい.N浜君によると今の時期はだいたい女王蜂が単独で巣をつくっているという.この個体は腹部が長いのできっと女王なんだろう.1枚目の写真はトリミングなし.カメラの性能的にはもっと近づいた接写が可能だが,僕のキモチの性能的にこれ以上ちかづくのは無理でした.2枚目の写真はトリミングしたもの.アシナガバチの女王もこうしてみると美人.巣の部屋のいくつかには米粒のような白いなにかが入ってる.きっと卵. 


 つぎの写真は熱心に調査をする調査員のみなさん.当初は植物にくわしいのはO野さんだけだったけど,いまではメンバー全員,たいていの種類はわかるみたいだ.見分ける力だけじゃなくて,おどろかされるのは見つける力.N浜君がさがしてる植物はいまの時期はまだ芽生えたばかりでぜんぜん目立たない.でも,M田さんは簡単にみつけて「おーい,ここにあったよー」と教えてくれる.教えてもらってすぐそばまで行っても僕はなかなかわからなかった.O野さんもM田さんも,どんな目をしてるんや.O野さん曰わく「本能や!」

 この頼もしいメンバーによる昨年の調査結果にちょっと気になる種類が含まれている.分布域からいうとあってもおかしくない種で,しかもあったらうれしい草原生植物で,おまけにこの島でこれまでに記録がない植物だ.開花期はまだしばらく先だが,今年も見られるかもしれない.夏がたのしみだ.