但馬の小学校へ

 僕の但馬の調査地のうちもっとも良好な半自然草原を擁する神鍋山.そのふもとの小学校の「ふるさと学習発表会」を見に行った.神鍋山の植物と地域の人の関わりについて4年生の児童が調査したという.
 小学校では「ふるさと学習発表会」のほかに「祖父母に学ぶ交流会」といった催しも同時開催されており,学校の駐車場にはたくさんの乗用車や軽トラックが停まっていた.小学校は,地域内交流の拠点としての機能を担うのにふさわしい施設だ.
 小学校に到着し,校長先生に挨拶し,会場となっている3・4年生教室へ入る.観客席には他学年の児童やら父母,祖父母がぎっしり入って満員.これまで電話やメールでやりとりしたことのある4年生担任のA先生にはじめてお目にかかる.教室の右前には,模造紙に大書されたプログラムが貼られている.プログラムの9番には「sawagani550先生のおはなし」とある.どうやら何か話をしなくてはならないみたいだ.
 4年生の児童らは5月に植生調査を実施し,また,この山の「かやかり」や「かやのやき」について地域の人に聞き取り調査をしていた.絵やグラフの描かれた模造紙をつぎつぎと黒板に貼りながらてきぱきと説明する児童たち.なんども練習してきたのだろう.1つのトピックスについて説明がおわると,5問くらいのクイズを聴衆に出し,父母祖父母をまじえた教室はおおいにもりあがっていた.クイズの問題はなかなか興味深くて,たとえば「かやのやきは,何箇所に火をつけるでしょう」とか「かやかりには何日かかるでしょう」とか「かやかりを計画するひとはだれでしょう」とか.
 客席のわかいお母さんは,かやがススキやって始めて知ったー,など,なんども感心していた.ぼくもススキの束をつかった「のきがこい」の写真をみてちょっと興奮した.
 教室の壁には,植生調査時に採集した植物の押し葉標本がたくさん貼られていた.クシバタンポポなども同定されていておどろく.
 さいごに僕の話す番.僕はこの草原のすごさについてアピールした.地域の人には,この草原に何が生えているのかとか,生えている植物の保全上の価値などはほとんど知られていない.知られていない状態では,保全とコンフリクトするような開発やら利用が起こりやすい.地域の人が自分たちの目の前にある自然を認識し,きちんと評価しておくことは重要だ.常々,この調査地の地元のひとたちにそうしたことを伝えたいと思っていたので,今回はとてもよい機会をいただいたとA先生に感謝している.これからもそのような機会をつくっていく必要がある.
 閉会後,わかいお母さんが1人ぼくのところにやってきて熱心にいろいろと質問をしてくださった.いままでこの山の花のことは知らなかったが,ぜひ来シーズンには見に行きたいと言っておられた.