ももクロの魅力

 すっかりももいろクローバーZにはまった.僕のiPodの中にはももクロの曲が少しずつ増えてきてる.ももクロの楽曲はほんとに質の良いものが多くて,アイドルの歌謡曲といって切り捨てるにはもったいなさすぎる.
 僕は「ピンキージョーンズ」で衝撃をうけてももクロに開眼したが,これに「Chai maxx」「未来へススメ!」「走れ!」を合わせた4曲はものすごくストレートに前向きでオススメ.ももクロの曲は彼女たち自身の決意を謳い,自らを鼓舞する内容が多いのだけど*1,同時に聞く人への応援歌にもなっている.そういうつくりになっている.決意と応援の歌だから,とにかくポジティブ.もうなんかすごい健全.
 この健全っていうのはももクロの魅力のひとつだ.前向きっていう意味での健全さだけでなく,猥雑さから遠いところに身を置いているという意味での健全さもすばらしい.メンバー5人(あかりんもいれると6人)ともすごくかわいいのに,色気で売ろうとしていないところが好感がもてる*2.この点で,ももクロが追い落とそうとしている仮想敵と際だって異なっている.
 でも,それよりも(いや,それも含めて)ももクロの魅力は,現在進行形の青春映画/成長物語であるところだ.
 物語にはふつう「主人公」がいて「目標」がある.よい物語は(よい論文がそうであるように),目標が明確で,ぶれない.なかでも,若く健全な主人公が一つの目標にむかって行動し,成長する様を描いた青春物語(あるいはビルドゥングスロマン)は,僕のようなおっさん(や大人の女の人)のココロをわしづかみにし,主人公を応援せずにはおれなくする*3
 ももクロは,アイドル戦国時代を勝ち抜いて一番の売れっ子になることを目標としていて,そのことを直接的にも間接的にもいたるところで表明している.そして,その目標の象徴として,ベタではあるかもしれないが紅白出場を掲げている.ももクロは,その目標に近づくための手段として,歌と踊りで聴衆のココロをつかむという正攻法をとる(この手段についても,ももクロは楽曲やインタビューで明示している).実際,彼女らのライブ映像をみるとファンにならずにいられないようなすばらしいパフォーマンスをやってる(生で見てみたい).
 ももクロは魅力的な主人公が明確な目標にむかって健全な方法でつきすすみながら成長しつつある,現在進行形の青春映画だ.だから「がんばっていきまっしょい」とか「スウィングガールズ」とか好きなひとは,ももクロにはまるといい.いまの時代,you tubeという便利なものがあるので,ぼくのような,いまごろになってももクロに気付いた「にわか」でも,「これまでのあらすじ」をある程度理解できたのは幸いなことだった.
 ももクロはいまものすごくきているらしいが,まだ物語はクライマックスを迎えていない.だから,はまるなら今だ.もしかしたらももクロは今年の紅白に出場するかもしれない.そうなると,今進行中の物語はそこでいったん幕を閉じる.もちろん,あらたな目標が明示されて続編がはじまるのだろうけれど(「終わりなき革命」って言ってるし),進行中の物語をリアルタイムで味わうなら,今はまらなくてどうする,というタイミングになってる*4. 

*1:顕著なのは「行くぜっ!怪盗少女」と「Z伝説〜終わりなき革命〜」

*2:「ちょっぴりセクシー」をキャッチコピーにしているあーりんですら,ぜんぜんエロスをただよわせていない.

*3:大人に刺さるようにマーケティングをしているフシがけっこうある.70年代〜80年代のポップカルチャーの引用がやたら多いところとか.

*4:今に至る前に,すくなくとも「メジャーデビュー」を目標とした物語があったはずだが,ほかにいくつの目標を達成してきたのかはまだよく知らない.「Z伝説〜終わりなき革命〜」の中で「第四話」と言ってるのが意味のある符合だとしたら,3つの物語があったのかもしれない.