冬の樹木

 近所の小学校で授業.
 9時40分から1時間,5・6年生を対象に,冬の樹木ウォッチング.校庭や学校周辺の木をみて歩く.先週金曜の下見のあと,昨夜まで内容を思案した結果の小ネタ集.うけるかどうか不安をいだきつつ開始.

 小ネタの1.ハゼノキの果実を手にとって種子のまわりに何がついているのかを観察した.指でしごくと指がつるつるになる.果肉部分をアルミ箔の上にあつめて裏からライターであぶって様子をみたりにおいをかいだりしてみると,蝋のにおいと言う子もあれば,ポップコーンのにおいと言う子もあり.いずれ油のにおいだ.和ろうそくの原料がこれだというはなしをした.つぎに,この蝋はハゼノキにとってどういう意味があるのかをかんがえる.ひとつのこたえを示したところ,鳥に運んでもらうつもりなのに外が赤くないの,と校長先生の疑問.トベラのような見かけ倒しではなく,実質の栄養で勝負しているということか.校庭のトベラはまだたくさんのこっていたけれど,ハゼノキの果実はほとんど持ち去られていたのは関係あるのか,たまたまか.

 小ネタの2.この小学校の5・6年生は樹木テーマの授業をこれまでにも受けているそうで,けっこう植物好きの子が多い.花の美しさは送粉昆虫などへのアピールであることはすでに知っている.そこで,虫の少ない冬に咲くサザンカはだれにアピールしているのかを聞いてみた.こどもたちから”鳥?”という声がでた.それで2人の児童の親指に鳥の顔を落書きし,親指の鳥に蜜を吸いに行かせたところ,あっというまに親指の鳥の顔が花粉で黄色くなった.ついでに指先のくちばしに蜜がついた.それをなめた児童があま!とさけんだので,うそーうそーといいながら何人ものこどもがサザンカをつついた.

 小ネタの3.クスノキのにおいをかぐ.たまたま地上1.5mあたりから出ている直径8cmほどの太い枝が枯れていたので,これをのこぎりで切断.切断中からあたりいちめんクスノキの香りにつつまれた.この香りの成分をなにかにつかっていたのだよという話をしたけれど,いまはゴンとかムシューダの時代なので,こどもらは樟脳のにおいなどしらなかったりする.そもそも防虫剤が匂うという認識がなかったり.

 小ネタの4.さむがりのフジの冬芽.毛が密生した芽鱗がしっかりと冬芽をつつんでいる.かなり毛深くて,フリースのようなやわらかな手ざわり.フジにはわるいが,少しちぎって芽鱗をかぞえると20〜30くらいあったみたいだ.枝の付け根の芽鱗の痕跡をみて,昨年1年の枝がどこまでか,一昨年の枝はどこまでかとかを追いかけた.

 小ネタの5.「校庭の隅っこ,倉庫の裏で空をみあげると星」というテーマ.じつはそこにはアオギリが植栽してある.みあげると,果実をとばしたあとの星形の萼片が冬空を背景にたくさん.単にカタチの楽しさを楽しむようなネタで,生態学的なおもしろさとか,人の暮らしにつながるおはなしとかはできないけれど,たまにはこういう単純なものもいいのかも.空を見上げたこどもが「あっ.ほんまに星や」といって息をのんだのをみてそう思った.子供らに「くだらねー」っていわれたらどうしようかとおもっていた小ネタだったので,まあまあ受けてほっとした.

 ここまでやったところでちょうど1時間.5分休憩.