せねきおぬきたい

 旅行業界の方々の研修で外来種の駆除をやるということで,その講師を依頼されて吹上浜へ行ってきた.駆除対象種は特定外来生物に指定されてるナルトサワギク.午前中に50分の講義と約1時間の海岸植物観察会.午後にナルトサワギク駆除活動という流れ.
 前夜,講義の準備をするときにJTBと近ツーのホームページで,「高山植物」「海岸植物」を検索してみた.すると,案の定,ツアー案内文の中に「高山植物」がでてくるものはいくつかみつかったが,「海岸植物」がでてくるものは皆無だった.そこで,講義のテーマは「海岸植物に萌える」と「外来生物問題に詳しくなる」の2本立てとした.「海岸植物に萌える」では,高山植物と対比させながら,海岸植物の魅力を僕なりにプッシュしていった.高山植物のうち高山帯にしか見られないもの(亜高山帯まで降りないもの)が約220種*1,海岸植物(海岸でしか見られないもの)は約280種*2.国土に占める高山植生の面積割合は0.3%で,海岸植生の割合は,湿原・河川植生と合わせても0.7%*3.そんな話をしながら,海岸植物のハビタット別に,そこに生きている植物の写真と,それぞれの環境の特殊さをみてもらった.
 観察会ではいろいろな砂丘植物をみて,匂いをかぎ,指先で触れて楽しんだ.オニシバの葉の先端の痛さを味わいこれで芝生をつくったら大変だと実感し,ビロードテンツキの葉裏を指でなぞって微妙なビロード感をたしかめ,ネコノシタの葉の猫の舌以外のナニモノでも無い感に感心し,ケカモノハシの穂の鴨の嘴といわれればそう見えなくも無い感とかを楽しんだ.6月にみつけたハマウツボがいまだに立っていたので,他人の稼ぎで花を咲かせるパラサイトな生きざまを説明したら「その生き方を参考にしたい」と女子の方が言い放った.
 午後のナルトサワギク駆除では,まずナルトサワギクの見分け方を説明し,抜いていくこととした.当初,そんなにないかもと思っていたが,抜きはじめてみると,めちゃくちゃある.とくに,多年生草本帯のうち地表面の安定度が高そうな部分(クロマツ林の最前線,クロマツ林が砂丘に進出した疎林部分)に大きな株が多数.この海岸では,ヒキヨモギ,イヨカズラ,クサスギカズラなどと競合しているようだった.