草原を創る演習・2年目(1)

 草原を創る演習が2年目に突入した.学生は新1年生に入れ替わった.今年度も4回の作業日を確保しており,今日は第1回目.これまでにこの日記に書いたことと重複するけど,以下,概要を書く.
 対象地は,造成斜面を牧草種子等で緑化した場所だ.例年6月と10月に業者が草刈りをする.緑化から推定11年が経つが,いまも春のフェイズでは,ネズミムギ(ネズミホソムギ)とコメツブツメクサが優占している.この演習では,この場所で,伝統的畦畔のチガヤ群落をモデルとして植生を転換することを目指す.
 ネズミムギは,この場所では冬型一年草として生活している.だいたい11月頃に発芽し,5月に出穂し,6月には結実/散布し,枯死する.つまり例年の草刈りのタイミングは種子をつくった後だ.そこで昨年,実験区では,出穂直後の5月中旬に草刈りをおこない,ネズミムギに種子をつくらせないようにした.
 その結果,この春のネズミムギの密度は対照区の2〜10%程度にまで抑えられた.じつは,冬の調査では実験区のネズミムギ密度は対照区の1〜5%くらいしかなく,いまより顕著な差があった.が,冬の調査のあとで,対照区では(おそらく過密のため個体間の競争があって)密度を大幅に下げたが,実験区では密度をそれほど下げることなく出穂ステージまで進んだ.このため,冬の調査時よりも若干差がちぢまった.それでも対照区の90%offだ.
 昨年の実験では,草刈りのタイミングを変えたほか,実験区の一部に近隣で採集した植物の種子を播いた.6月にチガヤ,ノアザミヒナギキョウウツボグサ,オニタビラコノゲシを播いた.昨年秋のモニタリングではいずれの発芽も確認されなかったが,今回の調査ではウツボグサのロゼットをいくつか確認できた.ただし歩留まりはかなり悪いようなので,タネをばらまくよりもよい方法を考えた方がよさそうだ.