ついにスマホの波に呑まれる

 身軽でいたいのと、固定費が増えるのがいやなのと、それほど必要性を感じてなかったのとで、今までスマホを持たずに過ごして来たけれど、とうとう買った。
 これまで使っていた携帯電話はノキア706。2009年の正月に買って7年4ヶ月使った。最近ではメール着信音がならなくなり、日本語の予測変換ができなくなり、画面にひびが入り、CLRボタンがはずれ、電池カバーのツメがおれて蓋がふわっとしか閉まらなくなっていたけれど、友達少ないから通話もメールもあまりしないから、まだまだ何の問題もなく使えてた。
 けど、知人から本を紹介してもらったときに「うちに帰ったら注文しよ」と僕が手帳にメモとってる横でiPhoneポチーして「在庫ラス1ポチったった」いうてるY川さんとか、会話の途中でおもむろにiPhoneで文献検索して論文ひっぱってくるY川さんとか、沖縄の山中で植物同定するときに僕が図鑑ひいて「載ってないわ」いうてる横でiPhoneさすって「ノパの庭にあった、多分これや」いうてさっくり同定するY川さんとかみてるうちに、あのー、まちがってたらゴメンやけどスマホてひょっとしたら便利なんとちゃうかとうすうす感づいて、こうなったら僕もざんぎり頭で牛鍋つっつきながらスマホで文明開化の音をならしたろうと3月のおわりごろに決心してドコモのお店に行ってiPhoneSEを予約した。窓口のお姉さんは黒コンやった。今日の夜にまたドコモのお店に行って、予約したときとは別のお姉さんのいる窓口で対応してもらった。このお姉さんも黒コンやった。もしかしたら黒コンはドコモショップの制服なんかなとおもってほかの人もみまわしてみたら黒コンじゃない人もいたので制服じゃないとわかった。ノキア706に入ってる電話帳をiPhoneSEに移す儀式を黒コンのお姉さんがやってみたけどうまくいかなくて、黒コンじゃないお姉さんと黒コンじゃないお兄さんも加勢して儀式をとりおこなおうとしたけれどうまくいかなくて、最終的に黒コンのお姉さんから、ノキア706が古すぎて電話帳を移植できませんという残念なお告げを受けた。古すぎるからじゃなくて、ノキアだからじゃないのかな。しばらくの間、ノキア706を電話帳代わりに持ち歩くか。身軽でいたいのに。