年配の方といっしょに図鑑をながめよう!

 隣保のS子おばあちゃんには学生oqさんも聞き取り調査をしている。そのときにいくつかナゾの植物名が挙げられていて、それを確認したくて木の実の写真図鑑を町内会の会合に持って行った。ナゾの植物は「よしろう」「よしのみ」と呼ばれるもので、落葉樹で、赤く熟した実を食べていたという。「植物方言名集成」には「よしろう」や「よしのみ」は出てこない。いまのところ僕とoqさんは候補としてエノキを考えていて、図鑑のエノキの写真を見てもらった。「これやったかなあ。そんな気もするけどなあ」という具合でまだ答えはわからない。「その木はいまでもあるんですか」と聞くと「いまもある。今は葉っぱはおちてるけど、うちの畑に覆いかぶさるように生えてる」という。だったらいっしょに見に行けばいいな。この日はS子さんは用事があって早々に帰っていかれたので、また折を見て教えてもらおう。
 図鑑の写真、よしろうは不発であったけど、S子さんはそのままページを繰ってどんどん写真をみておられる。そして、つぎつぎに方言名で種名を出してくれる。写真をみて即座に「これはちちんぼ(イヌビワの方言名)やな」「これはえびこ(エビヅル)か、そうやな」など、的確に見分けていく。この流れで、さきの「でっちしば」が出てきたのだった。年配の農家の方に聞き取りをしていると、かなり多くの植物を見分けて認識しておられることに気がつく。S子さんだけでなく、これまでになんどもそういうことがあった。
 年配の農家の方といっしょに図鑑を眺める時間をもっととれれば、いろいろな話がきけるような気がする。