投石器方式

 ひさしぶりの更新.
 草原をつくる演習は今年も1年生を対象として開講.今日が4回目で,近隣の畦畔で種子の採取.
 一昨年まで放棄状態で心配されていた棚田で今年は耕作がおこなわれていた.丁寧に草刈りがされたのでそこではタネをとれなかったが,草原の寿命がのびたことは喜ばしい.一方,昨年リュウノウギクやオミナエシやリンドウやアキノキリンソウをみつけて喜んでいた棚田が今年は休耕されていた.畦畔の草刈りも田面の除草や耕耘もなされておらず,畦畔ではネザサが大型化し,クズがひろがりはじめていた.田面にはセイタカアワダチソウホウキギク(ヒロハ?)が繁茂している.心配だ.
 実験区に草原生植物を導入する(タネをまく).これまでの5年間,ツリガネニンジンはばらまきでの定着が確認できていない.苗を植えた場合は定着している.発芽から定着の間になにか越えられないカベがあるのかもしれない.今年は1つのコドラートにツリガネニンジンだけをばらまきしてみた.そのコドラートはここ数年の草原づくりが功を奏して,セイタカアワダチソウ優占だったのがチガヤ優占に変わってきた植分.このコドラートでツリガネニンジンの発芽後の様子をみてみたい.
 ツリガネニンジンの果実を見ていて,いままで見過ごしていたことに気が付いた.ツリガネニンジンは花も果実も下向きになって,基部が上っかわにくるのだけど,この基部の側面が少しだけめくれるようにして小さな開口部をつくっていた.丸いカプセルの上に小さな穴が開いた状態となるので,カプセルの中で熟しているタネはこのままではこぼれてこない.強い風で茎がゆさぶられたときにだけタネをばらまく「ウィンドバリスト」だ.同じ科のキキョウもウィンドバリストだけど,キキョウの果実は上向きについていて,基部ではなく先端が開口する.ツリガネニンジンは下向きの果実の基部が開口する.開口する場所はまるっきり逆だけど,同じ戦略をとってるところがおもしろい.草原の植物にはウィンドバリストが多いように思う.オトギリソウとか,フシグロとか.この散布型はとても魅力的で,いろいろと気になることがある.
 今日の演習の後半,タネをまくために実験区を少しだけ耕していたときにK田君が土中に眠るカスミサンショウウオを見つけた.土の中からでてきたカスミサンショウウオをみたのは僕は2回目.前回は20年近く前,神戸の藍那でみたような記憶がある.藍那じゃなかったかもしれない.


ツリガネニンジンの果実は下向きに着き,基部が開口する.(2014/11/06 淡路市)
 

キキョウの果実は上向きに着き,頂部が開口する.(2009/10/10 豊岡市)
 

カスミサンショウウオを起こしてしまった.まだ小さな個体.