ナゾのかわいい小屋

 以前,淡路島北部の農村を歩いていて,小さな小屋をみつけた.5坪ほどの小さな小屋だ.ふつう,このへんの農家の板壁は焼杉板をタテに張るが,この小屋の板壁は材をヨコにつかっていて,しかも黄緑色のペンキが塗られていて,なんとも洋館風でかわいらしい.窓枠は白い木枠で,これまたかわいい.屋根はおそらく淡路瓦で,ここだけは日本風.

 
 近づいてみると,「ネッスル日本株式会社」と旧字体で書かれたアルミ板があり,その傍に800番台の番号札がついている.なんの小屋なんだろう.

 
 で,しばらくして,上の小屋から5kmばかり離れた海に近い集落で同じような小屋をもう1軒みつけた.上の小屋はもう廃屋となっていて修復でき無さそうなくらいに傾いてるが,こちらはまだ現役の農機具小屋として使われているらしい.やっぱり黄緑色の板壁,白い窓枠,瓦屋根.そして,おなじようにネッスル日本の表札と,800番台の番号札.番号は,上の小屋よりひとつ若い.屋根の形状はこちらのほうがさらに和風.



 
 いったい何の小屋なんだろう.ナゾが深まる.ネッスルにっぽんは今はネスレ日本になってるので,ネスレのサイトでネスレ日本の沿革をみてみたら,びっくり.ネスレ日本は,淡路島発祥といってもよいくらい,淡路島と縁の深い企業だった.
 ネスレの日本での歴史は,ネスレ・アングロ・スイス練乳会社が1913年(大正2年)に横浜に日本支店をおいたのがはじまり.その後,1922年(大正11年)に日本支店を神戸に移転し(関東大震災によるのかと思ってしらべたけど,震災の方が1年後だった),1933年(昭和8年)に淡路島の藤井練乳(株)と提携して国内生産を開始したらしい.後に藤井練乳(株)は淡路練乳(株)に改称.そして1960年(昭和35年)に淡路練乳がネスレ・プロダクト・カンパニー神戸支店(日本支店)と業務を一体化してネスレ日本(株)発足,とある.というわけで,淡路島とネッスル日本株式会社との関係はすこしわかったけど,この800番台の番号をつけた小屋がどういう役割をもった小屋だったのかはまだわからない.農家の人に聞いてみよう.
 
 余談.ネスレ日本のサイトでは沿革のページにすら「ネッスル日本」の名称がでてこない.1960年の発足時にはネスレ日本じゃなくてネッスル日本だったと思うのだけど,どうしてウェブサイトでネッスル表記が皆無なんだろう.

 余談2.原田知世が僕の神様なのでAGFブレンディを買わなくてはならない身の上なのだけれど,淡路島ファンとしてはネスカフェを買うべきかと思う.悩ましい.