里道でGO!

 先日のF集落での聞き取り調査の際,F集落からN集落に抜ける道があると聞いた.この話をしてくれたIさんはF集落に住んでいるが,N集落にも田んぼをもっていて,この道で農作業にでかけていたという.地図をみるといまでも道があるようだ.朝,思いたって,そこを通って職場まで行くことにした.職場はN集落にある.それほどの遠回りにもならない.赤いカブにのってその道に入っていった.
 はじめは幅員1.5m程度のコンクリート舗装の白い道だったが,ほどなく幅員1mの未舗装路となった.路面からネザサが生えていて,その草丈が1mほどある.ネザサを蹴倒しながら赤いカブでゆるやかな坂を登っていった.
 峠は粘土がむきだしたはげ山だった.背の低いアカマツやネズがまばらに生えてる.まわりにはもしかしたら湧水湿地があるかもしれない.そんな感じのはげ山だ.道ははげ山の脇を抜けていく.
 峠を越えて下り坂にさしかかったところで,道は急に狭くなり幅員1m以下に.そして,それまでフラットだった路面横断形状が,浸食によるV字谷となった.キャンバー走行で縁を走ろうと試みたが,表面の粘土にタイヤがすべり,あえなくV字谷の底に車輪を落とした.引き上げるのは難しく,あとはV字谷の底を走るしかない.V字谷にはところどころ泥濘が深く体積していて,その上に落ち葉がつもってる.いちばん深い場所では,カブの車軸くらいまで泥にうまり,ステップはV字谷の谷壁にひっかかって亀の子になった.愛機・赤いカブがオフロード耐性の高い車種でよかった.後輪が空転して泥を掘りながらうまりはじめたときも,二輪二足でなんとか少しずつ前に進んで行けた.僕の体格と技量だと,この車種以外では脱出できなかったと思う.以前のっていたセローだったら重すぎて大きすぎてもてあましたはずだ.
 しかし,そんなV字谷がいちばんの難所というわけではなかった.さいごに,馬の背があったのだ.左に水路.右に放棄水田.どちらも路面から1mくらい低い.道路はそれを隔てる堤を走る.堤の天端は,両肩がなだらかに浸食されており,Uの字を逆さまにしたようなかっこうで,おまけに表面はぬるぬるの粘土.タイヤをのせられる幅は20cmほどしかなく,足をつくことも押して歩くこともできない.距離はほんの1mもなかったが,アプローチから微妙にカーブしていて,イキオイまかせで突っ込めない.ここを無事通過できたときは本当にほっとした.
 そこから先は難所はなく,やがてコンクリート舗装の道にでて,無事に職場までたどりつけた.
 ずっと前の聞き取り調査で,この地域では,荷物を牛ではこぶときに荷車を引かせることはできなかったと聞いたことがある.道がわるくて荷車がつかえず,牛の背中に荷物をちょくせつ積んだらしい.今日の道を走って納得した.
 道中のはげ山やため池や放棄水田の植生がなんだかとてもすばらしい予感がする.春になって植物がおもしろい季節になったら徒歩か自転車でリベンジしたい.


↑これが愛機,赤いカブだ.防寒のためのハンドルカバーと荷台の玉ねぎコンテナは淡路島にトケコムためのオシャレアイテム.もっとも深く泥に埋もれているときはココロの余裕がなくて写真をとっていない.これはそこを脱出した直後のもの.ここでもそれなりに泥にうまっているので,カブはスタンドなしで自立している.通勤途上とはおもえない風景だ.


道中,気になった放棄水田.なにかいいもの生えてそうじゃないか.逆光でレンズのほこりかなんかが反射しまくってますが.