ため池カフェ

 学生N君の民俗カフェ.前回の集落の秋祭りのあと学際でもカフェを開催.さらに本日,学校近所の集落Fでこれまでとはちがう形式の民俗カフェを開催した(もともとこっちの形式を先に考えてた).
 集落Fの公民館を借りて開催.お客さんは集落Fにお住まいの方が約20人,うちの学校の学生が14人くらい.それとため池ステークホルダーである行政の農林関係の方.
 午後7時すぎに開始.まず最初の10分はN君によるキーノートスピーチ.これまでに90人くらいの方に取材して得た「ため池文化」の紹介.その後「ため池フォークロアトーク」と題して,地域の古老3名によるため池思い出語りをみんなで聞く.語っていただくといろいろと出てくるもので,N君のこれまでの調査で出ていない様々なため池文化が明らかになった.これがだいたい45分くらい.そのあと「ため池フォークロア歓談」.地域のオーバー60世代,アンダー60世代,うちの学生たち,行政の方,それらが各テーブルに入り乱れての歓談タイム.ため池の思い出を地域の方からお聞きして楽しむ交流の時間.歓談タイムの最後にテーブルごとの報告の時間をとった.そこで各テーブルでのいちばん面白かった話題を全員に伝える.あっというまに2時間が過ぎて閉会.地域の方にも学生たちにも楽しんでもらえたようだ.「世代間・地域間で交流をしながら,ため池文化を収集し,同時に発信もおこなう」という当初のコンセプトどおりのイベントとなった.N君の民俗カフェはあと1回.こんどはひとつの集落ではなく,U川流域を対象として,11月20日に開催予定.それがおわったら,あとは一気に修論をまとめるのみ.

 印象深かったこといくつか.

  • ため池でいちばん美味しい魚はマブナ.コイよりもマブナがおいしい.身が甘い.ヘラブナはコイに劣る.
  • ため池に放流するコイの稚魚は,かつては田んぼで育てていた.藤の花のころに田んぼに親ゴイを放して産卵をさせた.そこから生まれる稚魚を一夏育てて,秋に落水するときにすくい集めて,池に放した.この風習は除草剤を使うようになってから廃れたが,除草剤をつかうようになった当初は,コイ用の田んぼを設けてそこだけは除草剤をまかないようにしたりした.
  • コイやフナの美味しい季節は冬.寒ブナ・寒ゴイ.だけど冬はつかまえるのが難しい.つかまえやすいのは藤の花の時期.水面付近に来るからとのこと.
  • これまでのN君の聞き取りの中で,ため池の水を井戸に引いて生活用水としたという話があって,なんで井戸に池の水をひくのか不思議だと思っていた.というのは,地下水の湧く井戸ならため池の水を入れて汚すのはへんだし,水が涸れたカラ井戸だったら池の水を入れても抜けそうに思ったからだ.そのナゾが今回とけた.井戸とは,庭先につくられた貯水槽のことを指していた.地下水にとどくほど深く掘ったものではない.ため池の余水吐けを出た水は川を流れる.その川から水路を経由して庭の「井戸」に水を溜めていたとのこと.井戸という言葉が指すものは一つではなかった.集落内に地下水にとどく深い井戸を持つ家もあったし,池の水をためておく浅い井戸を持つ家もあった.
  • 集落Fは標高150mくらい.山の中だけど海岸からの距離は2kmほどと近く,眼下に海が見えている.海が見える距離だけど,海の魚ではなく池の魚介類をかなり利用していた.実は,海が見えるようになったのは近年のこと.海と集落の中間に大規模な造成地があるのだが,もともとそこは山だった.集落Fから海に出るには,山を越えて(迂回して?)行く必要があった.大阪湾の埋め立て(関空かな?)のために山が無くなって海のみえる集落になった.