草原をつくる演習・カヤネズミ

 1〜2限は草原をつくる演習.12時間/年というわずかな労力投入で,セイタカアワダチソウや外来牧草で覆われた造成法面を半自然草原へと転換しようとする授業.
 春咲きの植物のタネを初夏に取り播きしているが,これらが秋に確認されることはほとんどないようだ.さすがにそんな時期は発芽適期ではないのだろう.温度の低下または冬期の低温で解除されるのかな.昨年秋にタネで導入した植物がいくらか増えていた.アブラススキとかメガルカヤとかつるまめとか.ツルマメ,すごい大株に.いずれこの授業の成果は実学系の学会で発表することにしよう.学生との行き違いによるミスも多々あるが,こういうのも公園管理や緑化現場では起こりうることだろう.その点でも参考になる.

 セイタカアワダチソウ等の選択的抜根除草をおこなった.保全対象種をある程度植え込んだ状態になると,面的な除草や刈り取りがやりにくくなり,選択的な除草が必要となってくる.学生達に抜根除草を実施した感想を聞いてみた.大変な作業と思うかとの問いに,ほとんどの学生は楽勝と答える.そう.セイタカアワダチソウの抜根除草は労力としてはたいしたことはない.1人だけ,むずかしかったという学生あり.彼は農学系ではなく芸術系学部から進学してきた学生.むずかしかったポイントは,どれを抜けばよいかの判断が難しかったと.たしかに.これもまた,公園管理や緑化の現場で気にするべき視点.

 実験区はいくつかの処理区にわかれてる.セイタカアワダチソウの抜根を3年間繰り返してきた区画で,セイタカアワダチソウ跡地にエノコログサ類やメヒシバが優占したパッチがあった.そこにカヤネズミの巣があるのを学生がみつけた.空の巣のようだし,ここはもうすぐ草刈りがおこなわれる場所なので,巣を採取したが,いまはカヤネズミ繁殖期だとあとから知った.しまった.のこしとくべきだった.カヤネズミが住んでいるということを考えると,学内の草原管理は同一時期の一斉刈り取りにしないほうがいいかもしれない.菅理スケジュールの異なる数パッチに区分し,1年のうちでパッチダイナミクス的な管理をおこなうなど,つねにどこかにハビタットを確保する方がよさそうだ.現状,業者への草刈りの発注は全域一斉を2回としている.事務部門を巻き込む話になるので今後の課題としよう.

 今日も,上空をアマツバメが南下していく.そして,学内の木々にエゾビタキが立ち寄っていく.僕の視力がとどかない高空をサシバやハチクマがながれているのかもしれない.


何年か前にカヤネットの人から買ったカヤネズミ実物大ぬいぐるみを添えてみた