FD講演会

 工学部キャンパスでFD講演会が開催されたので行ってきた.講師は滋賀県立大学の倉茂さん(「環境科学を学ぶ学生のための科学的和文作文法入門」の著者).これだけでも行く動機になるが,事前に配布されたチラシの文面がまた魅力的だったので,参加しないわけにはいかなかった.チラシにはこう書いてあった.

演題:授業の基本−もっとも基本的なこと−.
内容:(略)大学の授業を観察すると,本来なら教師が持っているべきスキルに欠けている授業の多いことに気がつきます.そこで今回は,まず「悪い授業」と「良い授業」の両方を演じてみます.いったいどこが違うのでしょうか.(略)

 いやもう,本当に参考になった.倉茂さんを呼んで下さった工学部のFD委員の方に感謝します.これ聴けて僕はラッキーだった.今回の講演は,本来ならば120分×6回のシリーズのものを100分に縮めたダイジェスト版とのこと.全編を聴いてみたい.
 最初のおどろきは「悪い授業」を演じられたとき.なぜかというと,演示された「悪い授業」は「普通の授業」だったのだ(少なくとも僕が大学で受けた授業はほとんどがこのタイプで,中にはもっと露骨にひどいものもあった).このつぎに「改善した授業」を演じられた.ここでは,悪い例とどこが違うかを片っ端から発見するつもりで観察したが,その作業がすごく勉強になった.
 悪い授業と良い授業,異なる点は大きく2つあった.1つは教師が用いる“技術技巧”の違い.すなわち,「発問」「視線」「発生」「ゼスチャー」「机間巡視」「板書」などの技巧の違い.もう1つは“内容”の違い.すなわち,授業を聴く気持ちにさせるためによく練られた「導入」と「展開」.前者は取り入れることがわりとたやすい技巧である.倉茂さんによれば授業改善のためにより大事なのは後者とのことだが,これはいろいろと試行錯誤をする必要がありそうだ.とはいえ,ヒントとなる事例をたくさん見せていただいた.僕も授業の導入を毎回考えてやっていたが,その中には単なるアイスブレークにすぎないものがあったことに気付いた.講義の内容への期待感を抱かせるには,ちょっとズレたものがあったようだ.
 何よりも,今回の講演そのものが具体的なよい授業の事例であった.たしかに魅力的な導入があった.そして,途中でまったく聞き飽きないおもしろい展開だった.
 こういう講演を聴くと,おもしろい授業をやりたくなってくる.来週の授業の導入と展開をまずは考えてみよう.