ハクチョウソウ Gaura lindheimeri

 ハクチョウソウは近年流行している園芸植物のひとつ.園芸・造園の人たちからは「ガウラ」と呼ばれることの方が多いようだ.日本帰化植物写真図鑑の第二巻ではヤマモモソウの名前で掲載されている.北米南部の原産.USDAのPLANTS Databaseによるとルイジアナ州テキサス州に分布があるようだ(→).
 日本では,公園や沿道などの比較的大きな花壇に植えられることが多く,背丈は150cmくらいになる.


 僕の勤務先やその近隣の沿道の花壇にも植栽されている.そこからごく少数ではあるが逸出個体が見受けられる.いまのところ逸出個体は花壇からせいぜい20mくらいの範囲まででしかみられない.


逸出個体その1.
 田んぼと道路の間の法面(畦畔法面)にはえている.同じ場所に生えている植物は,ブタナ,チガヤ,ノイバラ,メリケンカルカヤなど.このガウラは高さ40〜50cm程度.ガウラを植栽した花壇から約20mほど離れたところ.


逸出個体その2.
 路傍にはえている.同じ場所に生えている植物は,ヨモギ,クズ,オオアレチノギク,セイタカアワダチソウ.ここでのガウラは高さ70cm程度.ガウラの植栽花壇からは10数m.


逸出個体その3.
 路傍のコンクリ目地に生えている.同じ場所には,オオアレチノギクとコニシキソウ.草丈30cm程度.ガウラの花壇からは20m程度.


 以上3枚の逸出個体の写真はすべて今朝(9月15日)撮影したもの.一つ目は畦畔とはいえ,道路に近い部分に生えていた.したがって,どれも路傍といってよい環境かもしれない.棚田の畦畔の中にまで入っていくかどうかは,もう少し様子をみないとわからないが,少なくとも草刈りの攪乱をうける立地でもやっていけてそうではある.
 これらの最寄りのガウラ植栽は↓の感じ.歩道と車道の間に設けられた植栽帯に,ローズマリーと交互に植えられている.播種ではなく苗植えで導入したとのこと.それが,じわじわと周囲にひろがっているようだ.


 ガウラの果実をとってみた.長さ約8mm,幅約3mmの鞘状のもので,鞘はたいへん固い.木質の分厚い果皮があり,中に長さ2.5mm,幅1mm弱の種子が(おそらく)4つ入っているようだ.ガウラと同じアカバナ科マツヨイグサ属だと,ひとつの鞘に大量の種子が入っていて,熟すと鞘が裂開してタネをこぼすようになっている.それに比べるとガウラはひとつのさやに入っている種子数が少ないし,どうも熟しても鞘が裂開しないのではないかと思う.そのくらい固くてびちっと締まっている.ほんとうに裂開しないかどうか,もうすこし観察する必要がある.いずれにせよ,風にのって遠くまで行くようなタイプのタネではない.果実を水に入れてみたところ,木質の果皮のおかげでよく浮かぶ.流水散布か.