亀は意外と激しくちびる(いきもの苦手なひとにはきつい表現あるかも)

 午後,環境教育の素材や道具を買いにホームセンターまで出かけた折,みちばたで甲羅の長さ15〜20cmのクサガメをみつけた.どうやら道路を横断しようとしている.そのままではロードキルの犠牲になるかもしれないので,道の反対側まで運んでやることにした.
 クサガメをもちあげて顔をのぞいたら,「きゅうっ」と甲高い声(音)をあげて首をすくめた.と同時にしっぽの側から,じょばばばばっとはげしく尿を放つではないか.水圧が高いのか,直線的に射出され飛距離を伸ばしている.尿の軌跡は直径3mmはあった.アスファルトにおちて水しぶきを上げている.激しい.激しすぎる.あやうくジーンズにかかるところだった.数秒で放尿が止んだので,アスファルト表面を滔々と流れる尿に顔を近づけてくんかくんかと嗅いでみた.意外やそれほどきつい匂いはない.じゃあクサガメのあの匂いはどこからくるのか.すぼめている首に顔を近づけくんかくんかと嗅いでみた.やっぱりくさくない.それではと,こんどは後ろ足としっぽの間あたりの甲羅のくぼみに顔を近づけてくんかくんかと嗅いでみた.やっぱり臭くないと思いかけたその刹那,匂いの塊が鼻腔の奥から喉にかけて,まるで粘度の高い液体のような存在感と重量感をともなってなだれこみ,喉のあたりでしばらくごろごろと滞留した.匂いの塊が喉になだれ込んだ0.5秒後には脳を介さぬ反射でもって嘔吐しそうになった.後頭部を殴られたような衝撃とはまさにこのことだ.おどろいた.こんな嗅ぎ方をしてはいけない.クサガメ危険.悪い意味でヤバイ.そして,そうか,臭いのはそのへんからくるのか.
 子供の頃は草亀だと思っていた.草はきっと緑の体色から来てるのだと思っていた.が,臭亀が正しいらしい.たしかに,まちがいなく臭亀.あそこまできつい匂いで防御するなら,臭亀を補食する生き物なんかいないんじゃないかという気すらする.