こまる

 昨年も書いたが,この大笹のザゼンソウ保護地の近隣では,産地不詳のミズバショウを休耕田に植栽して増やし,"みずばしょうの里"と称して観光資源としている.しかし,大笹はミズバショウの自生地ではない.兵庫県ミズバショウ自生地は,大笹から南東に10km離れた加保坂の蛇紋岩地帯のみ.加保坂のミズバショウ個体群はミズバショウの分布南西限であり,ここを除く南西限である岐阜県ひるがの高原から飛び離れた隔離分布という興味深い個体群である.花粉分析の結果から,加保坂では1万1千年以上前から自生していたことがわかっている.加保坂の自生ミズバショウは,葉に濃緑の斑が入り,仏炎包が小さくて肉穂花序が仏炎包からはみ出すのが特徴だそうだ.加保坂の自生ミズバショウは約2000株。一方,大笹の植栽個体は1万5000株あるという.大笹では植栽地の休耕田から下流側の水路沿いに逸出している.
 "みずばしょうの里"についてググってみたら,苗の通信販売をしていることがわかった.また,ミズバショウの里の近くの休耕田に約1000株のタカサゴユリ外来種)を植え,夏の観光資源にしていることもわかった.
 むやみに植えたり放したりしてはいけない,ということをより多くの人に理解してもらう努力をつづけていかなければいけない.少なくとも新聞はこういったものを「自然のもの」として紹介するのをやめてほしい.