嗅いでみる

 朝8:30出発,夜20:30解散という長丁場で,但馬までお出かけ授業.大笹のザゼンソウ,兎和野の大カツラ,加保坂のミズバショウ隔離分布,樽見エドヒガンを見て回った.昨年もおなじ授業をやっている.

 大笹ではザゼンソウの生育地をロープで囲って保護しているが,ロープの外にもどんどん広がっていて手で触れることもできる.仏炎包を指で触ってそのにおいを嗅いでみると,ちょっとばかり,シャウエッセンとかアルトバイエルンなどと共通する香りがある.通路に生えたばかりに踏み潰されてしまった不運な個体があり,この踏み潰された多肉質の仏炎包の汁を指につけてみると,たしかにソーセージの香もあるが,えぐいような臭みが加わり,なるほどスカンクキャベジの英名は伊達ではない.この微妙にくさい匂いを他でも嗅いだことがある.ひょっとしたら食べたことがあるのかもしれない.何だったか思い出せそうで思い出せない.ソーセージと千切りキャベツをケチャップとともに炒めてパンにはさんだものの香りはわりとこれに近いが,それに加えてちょっとたべるのを躊躇するいやな匂いがまじっている.傷んだキャベツでそれをつくったらこんな匂いになるかもしれないが,さすがにそんなものを作ったり食べたりした体験はないはずだ.しばらく考えて,この匂いをどこで嗅いだか思い出した.食べ物ではなかった.ハマグルマ(キク科の海浜植物)の果実を大量に集めたときにこんな匂いがしたのだった.どのくらいそっくりか嗅ぎ比べて確かめたいが季節があわない.


 兎和野の大カツラは,今年はまだ落花はなかった.赤い芽鱗はけっこうたくさん落ちている.カツラの周囲にはヤマルリソウとかボタンネコノメとかニリンソウとかミヤマキケマンとかが咲いている.エンゴサクの仲間(同定していない)の花の香を嗅ぐと,ジャスミン茶の香りがした.かなり強いジャスミン茶の香りだった.エンゴサクの花をまじまじと見ていた学生が「エヴァ初号機に似てる」とつぶやいたが,承服しかねる.なんとなくわからんではないけれども.