草原をつくる演習(3)

 前回6月11日のつづき.あれから4ヶ月.ひさびさの草原の演習.この間,7月2日に1回植生調査を実施していた(別の授業で).そのときに播種区ではなんだかわからないイネ科の芽生えがけっこうあり,チガヤかどうかわからないけどちょっと期待していた.が,一方で,セイタカアワダチソウもその段階で高さ20cmだか30cmだかくらいまで伸びてきており,不安を感じさせていた.
 さて,今回の調査で現場はどうだったか.施工地には3つの処理区がある.ネズミムギを結実前に刈り取った「早期刈り取り区」.ネズミムギを結実前に刈り取った後でチガヤ群落構成種のタネを播いた「早期刈り取り+播種区」,従来通りネズミムギ結実後に刈り取りをした「対照区」である.今回,どの地点でも一様にセイタカアワダチソウが優占しており,その他の構成種も処理区間でほとんどちがいがなかった.「早期刈り取り+播種区」では,6月11日に播種した種は全く確認されなかった.発芽したけど枯れたのか,それともまだ発芽せずに眠っているのか,そのへんは分からない.7月2日のナゾのイネ科の芽生えはエノコログサ類だったかもしれない.セイタカアワダチソウの間にエノコログサ類(キン・アキノ)はそこそこ生えていた.
 今回の調査によって,この造成斜面の夏から秋の問題点としてセイタカアワダチソウが優占していることが認識できた.春から初夏の「ネズミムギの密度を下げる」という課題に加え,夏〜秋では「セイタカアワダチソウの密度を下げる」ことが課題であるとわかった.
 この斜面では,従来,年2回刈り取りが行われている.年2回の刈りとりのうち1回をネズミムギ結実前の5月下旬にやってしまうと,のこりの刈り取りは1回.そのような管理でセイタカアワダチソウの密度を下げるのは,文献の事例などをみる限り困難と思える.刈り取り管理だけでセイタカアワダチソウの密度を下げるのなら,5月と10月の間にもう1回,7月か8月にも刈り取りをしたほうがよさそうだ.刈り取りは,業者さんにお願いするとだいたい30円/平方メートルだそうだ.0.5haなら15万円か.
 調査のあと,学生たちと今後の管理について協議.対照区は従来通りの管理なので,10月下旬に刈り取りを行うこととなっている.それに対し,のこり2つの処理区では,対照区と同時に刈り取りをするが,刈った草は残置せず系外に運び出すこととなった.系外に運び出したい理由として,この秋にもう1回演習授業をおこなう際,ツリガネニンジンなど夏〜秋に咲く草原生植物の種子を採取して播くため,地表を明るくしておきたいということをあげていた.また,今回の授業中にできる範囲で,セイタカアワダチソウの抜き取りを行うこととした.手鎌で刈るより抜く方が簡単と分かったためだ.で,14人×30分でできる範囲で抜き取りを行った.学生からのその他の意見としては,どのみち今生えている植物に残したいものがほとんどないのだから環境影響の少ないタイプの除草剤で一旦全滅させて,その後で種子による導入をおこなったらどうか,という「リセット案」があった.今回それは見送ったが,実験的に小規模でやってみることには調査としての意義があると思う.
 次回,11月中頃に種子採取と播種を行う予定.もしかしたらそのときに直接播種だけでなくポット苗づくりを行うかもしれない(学生の意見次第).そのあとは,次の春にネズミムギの密度がさがるかどうか,また,抜き取りをおこなった範囲で次の夏のセイタカアワダチソウの密度が下がるかどうかが興味深い.