ノイズキャンセリングヘッドフォン

 昨日(10日),神戸に出たついでに電機店に行ってきた.ノイズキャンセル機能のついたヘッドフォンを試すためである.試聴用の製品が5つ6つあったので試してみた.ノイズキャンセルのスイッチをオンにしたとたんに,周囲の騒音がまるでどこかに吸収されてしまったかのように,しんとした静寂につつまれた.人の声などはふつうに聞こえるが,空調の騒音や,雑踏のうわーんといった音が消えて無くなったのだ.こんなすごいとは思わんかった.これなら使える.インキュベータの騒音を打ち消してくれるにちがいない.でも値段もそれなりに高い.試聴した製品はだいたい13000円から3万数千円.近くにいた店員さんに聞いてみると,5000円くらいの製品でもノイズキャンセルの効果は大差ないという.じゃあ値段の差はなんなんですかと問えば,音楽を聴くときの音の良さの違いなどが主だという.ほんまか?僕はそれで音楽を聴くつもりはなく騒音の消去だけに価値を見いだしている.店員さんのいうことが本当ならば5000円の商品で十分ということになる.その5000円くらいの製品をためしてみたいと言ったが,そのクラスの商品は試聴用はおいていないと返された.気の弱いわたくしはそれ以上言い出せず,試聴して感激した13000円の製品を買うか店員さんの言葉を信じるか(インキュベータの騒音を我慢しないことにどれだけの金額をだせるか)で悩み始めた.ここで,わたくしの中の貧乏性が頭をもたげてきた.安い方といっても5000円,私にとっては十分に大枚である.これで効果がないわけなかろう(←なんの根拠にもなっていない).それに店員さんはノイズキャンセル機能は試聴した品と大差ないと言うているではないか(←確証バイアス?).結局約5000円のソニー製の品を購入することにした.店員さんはにっこりほほえんで「この商品が一番よく出てますよ」とダメ押し.
 明けて今日(11日).研究室に来て,わくわくしながらヘッドフォンを取り出して装着した.スイッチオン.
 あれ?電機店の視聴であじわった感動がないぞ.静寂がつつみこむ感覚がないぞ.どういうこと?
 たしかにインキュベータの騒音は半分から1/3くらいに緩和されるけれど,静寂にはほど遠い.さらに,ヘッドフォンからサーーーッというノイズ(ホワイトノイズというらしい)が常に出る.まあ,インキュベータのうるささにくらべたらホワイトノイズはたいしたことないから,我慢するか.5000円も払ったことだし.と,自分をむりやり納得させて,ホワイトノイズをごまかすために音楽をかけながら使い始めたが釈然としない.やっぱり分不相応であっても13000円の機種を買っておけば,劇的なノイズキャンセルを味わえたのだろうか.
 正直にいうと,このヘッドフォンを買ってしまった事実をキャンセルしたいです.