かつどんの多様性研究

 うちの学校では4人の教員で1つの部門をつくっている.ゼミは部門単位で「部門ゼミ」をやっている.が,そのほか,僕のもとで卒業演習にとりくむ3人の学生といっしょに,プチゼミを水曜の午後に開催している.
 本日のプチゼミの内容は,3人のうちの1人がやっている塩湿地でのフィールドワークをみんなで手伝うこと.室内でゼミ発表をしてから散歩(観察会)というのが,プチゼミの定番スタイルだが,いまは繁忙期なのでフィールドを優先した.調査地は加古川の塩湿地.ついでに,かつどんの多様性研究のフィールドワークもこなす.
 どんぶり科かつどん属は意外と大きなグループで,和風だし醤油味卵とじのいわゆるふつうのカツ丼(広域分布)のほか,キャベツとソースのかかったソースカツ丼(おもに信州〜北関東に分布),キャベツのないソースカツ丼福井県に分布),キャベツと赤味噌だれの味噌カツ丼(東海丘陵要素),ソース味の卵とじカツ丼(福島県に分布),醤油だれカツ丼(新潟に分布,伊勢に隔離分布),キャベツとデミグラスソースのデミカツ丼(阿哲要素)など,さまざまな種が全国各地で記載されている.兵庫県東播磨一帯には固有種「かつめし」が分布していることが知られているが,僕はまだ採集したことがなかったので,今回これを目当てにでかけた.ニッケパークタウンの南にある昔の街道の面影ののこる商店街,旭食堂という店である.昭和40年代をいろこく残す店であった.暑い日に網戸にして扇風機がまわっているというだけで,ノスタルジーをこのうえなくかき立てる.そうそう,僕がこどものころは銀行とデパートと阪神電車くらいしかクーラーかかってなかったよ.神戸電鉄阪急電車は扇風機車両に出くわす率がけっこう高かった.
 さて,かつめしの同定のポイントは,どんぶりでなく皿に盛る,カツは牛肉であることが多い,デミグラスソースがかかる,レタスやゆでキャベツがすこし添えてある,という4点であるようだ.阿哲要素のデミカツ丼との違いが知りたいので,こんど岡山にいく機会があればためしてみたいと思う(昨年の学会のとき食べそびれている).
 かつめしはたいへんおいしかったので,また採集に行きたい.