標準和名でなく園芸家に通じる名前を使った外来植物図鑑が必要かも

 ところで,緑化や植栽という行為は,しばしば外来種問題の原因となっている.とはいえ,緑化や植栽に携わる人たち(ガーデナーと呼ぼう)は外来種問題を引き起こそうとしているわけではない.そうならないように注意しようと考えるガーデナーは徐々に増えているように見える.そういう人から「どの種類が野生化しやすいのかがわからない」という話をよく聞く.それで外来植物の図鑑を見るようにオススメするのだが,ここでちょっとした問題がある.図鑑に出ている植物名と,ガーデナーが使っている植物名がいっしょではないのだ.
 たとえば,ペラペラヨメナ.野外での植物の観察を趣味としているひと(ナチュラリストと呼ぼう)には図鑑にでているペラペラヨメナの名で通じる.しかしガーデナーはそんな名前はしらない.ガーデナーはその植物のことをエリゲロン・カルビンスキアヌス,あるいは単にエリゲロンとだけ呼ぶからだ.ガーデナーはイソホウキギといわれてもピンとこないが,コキアといわれればすぐわかる.アレチハナガサといわれてもなんだか分からないがバーベナの仲間だといえば納得する.緑化業者には,シナダレスズメガヤよりも断然ウィーピングラブグラス,ギョウギシバよりもバミューダグラスのほうが通じやすい.
 いま売られている外来植物図鑑のほとんど全てがナチュラリスト向けにつくられているようで,標準和名を筆頭に用いていることが多い.別名が書いてある場合でも,和名の異名のみがでている場合が多く,園芸や緑化業界での通名とはちがう.そういう図鑑は,外来種問題を回避したいガーデナーや緑化業者にとっては使いにくい.ガーデナーや緑化業者が使う通名で引きやすい外来植物図鑑が必要だと思う.そのような図鑑は,緑化や植栽に端を発する外来種問題を回避するための道具として有効だろう.
 さしあたっては対応表の整備が必要か.