属名だけで呼ぶ習慣

 月曜は2年生の演習.午前中は園芸植物・緑化植物を知る演習である.学内の庭園を3時間ほどかけて巡回しながら,草本20種木本20種について,その利用や栽培管理などのポイントについて解説を聞く.植生学・生態学を専門としている僕にはなじみのない植物が7割くらいあるので,学生といっしょにあるきながらこれらを覚えていくのもたのしい.
 園芸や造園でふしぎなのは,植物の名前を属名だけで呼ぶことがしばしばあるということ.
 属によっては,種間交雑を人為的に繰り返し(品種をつくる)ているために,もはや種名をつけることも,特定することも困難であるためにそう呼んでいる場合があるそうだ.たとえば,ヴィオラのなかまはその手合い.種名はもはやないに等しく,学名もViola sp.でひとくくりである.ちなみにパンジーも学名ではViola sp.で,学名ではいわゆるパンジー系なのかヴィオラ系なのか識別ができない.物を見てもわからない場合もあるらしいが,おおざっぱにいえば,花弁に紫黒色の斑がでるタイプ(モンキーフェイスと呼ぶ)ならパンジーで,そうでなければヴィオラ系ってことらしい.
 もうひとつは,きちんと学名に種小名までついていても,通称は属名のみだったりする場合.今日の演習ではPotentilla nepalensisを単にポテンティラと呼んでいた.ちなみにこのポテンティラは,赤紫の花である.日本のPotentilla属との違いにおどろくが,それでも花や葉のカタチはたしかにPotentillaらしさを随所にたたえているのが面白い.