検索表のつかいかた(僕が学生に伝えたやり方。きっと正統派じゃない)

 検索表の実践的な使い方って、あんまりネット上にもころがってないみたいだから(いや、あるのかもしれないが、僕の探し方がわるいかも)、荒っぽい書きかただけどあげておこう。
おそれるな
 初心者は検索表に頻出するわけのわからない用語にたじろいで「自分にはまだ早い」と敬遠してしまうかもしれない。が、おそれることはない。ともかく使ってみることが使えるようになるための第一歩(コンピュータのソフトとおんなじ)。検索表が使えるようになったら、同定の楽しさは倍増することまちがいなし。
用意するもの
 ルーペ、実態顕微鏡(僕は持ってないのでファーブルで代用)、ピンセット(先のとんがったやつ)、定規(検索表はしばしば“○○はXXmm以下”などと細かいことを聞いてくる)、メモ用紙と筆記具(検索表のたどった道筋をメモしておく)。あと、用語を確認するために「写真でみる植物用語」などの用語集あると便利。フィールド版図鑑の冒頭ではたいてい数ページを割いて用語解説があるので(逆に検索表のついた立派な図鑑ではこれは省略されがち)、そういうのも普段から目を通しておくといい。図鑑によって用語が違うことがときどきある、ということも図鑑リテラシー(そんな言葉あるのか?)として覚えておこう。
基本のキ
 検索表は基本的には検索キーを二者択一しながらたどって行くだけだ。たとえば、「1.茎に毛がある」と「1.茎に毛がない」の二つの検索キーから該当するほうを選んで、つぎにその下位の検索キー「2.葉は線形」と「2.葉は心形」へと進むような具合だ。これだけなら簡単。
軽く行きづまったとき
 問題は、まったく分からない用語にぶつかったとき。あるいは、検索キーの求める器官が手元の標本についていないとき(たとえば、果実の色がキーになっているのに手元の標本には実がついていない)。こんなときは、とりあえず、それぞれの検索キーの下にぶらさがっている植物の図版を全部みてみよう(ぶらさがってる種が少ない方からみる)。それによって検索表の言葉の意味がわかることがある。また、片側の検索キーにぶらさがってる植物種すべてが手元の標本とぜんぜん違う形態だったり、分布域がかけ離れている場合などは、その選択肢をとりあえずは捨てられる。
激しく行き詰ったとき
 検索表をたどっていっていよいよ進退窮まるときがある。用語が意味不明(あるいはキーとなる器官が手元にない)で、図版をみてもどれもよく似ていて、分布域からも片方の選択肢を棄却できない、というとき。そういうときは、両方の選択肢で、それぞれむりやりすすめてみる。たとえば3aと3bのどちらとも決めかねているときは、仮に3aだとした場合にどこにたどり着くか、3bだとしたらどこにたどり着くか、やってみる。たどり着いた植物を見比べると「仮に3aだとした場合に行き着いた種は手元のものと同じっぽいけど、3bだとした場合にたどり着いた種は手元のものとはどう見ても違う、よって3aをたどった場合のが正解っぽい」って具合に解決することもよくある。
どうしても分からないとき
 そうやってみても、どうしても分からないときもある。候補となる種は4種くらいに絞れたけど、どれも可能性があり、さらに本文を読んでも絞り込めない、っていう場合。そういうときは、「検索表をどのようにたどったか」と「可能性のある種」をメモして、保留しよう(メモと標本をいっしょにおいておこう。いつか誰かに聞ける日か、自分がレベルアップして分かる日が来るかもしれない)。むりやり名前をつけないことが大切だ。候補となる種がまったくないという場合や、検索表をたどって行き着く先は手元の植物と似ても似つかないという場合がある。そんなときは、その図鑑に載っていない種を採ってきたのかもしれないし、あるいは検索表を使う前に、属や科の見当をまちがえてしまった可能性がある。こういうときもむりやり名前をつけずに保留しよう。
名前を知りたい気持ちが大切
 名前を知りたいという欲求は、実はとても大切なことだ。まきぞうさん「ビューティフルネイムズ」(名文だ)を読んでみてほしい。このなかの一節“「名もない花」は一時の感動を与えるかもしれないが,長くつきあい多くを学ぶことは出来んのですよ.”はココロに突き刺しておきたい名言だ。あと、名前を知りたいとおもったとき、たいていのものに名前がついてるってことは、実はすごいことで、ありがたいことだと思う。名前まで行き着くことで、なんだか分かった気になっちゃうというオソロシサがある一方で(だからそのオソロシサは自覚しておこう)、名前が手に入ることで僕たちはつぎの世界へ進めるのだ(←まきぞうさんのいってることといっしょやん)。
これでいいのか?
 「その記述はまちがっとる」とか「こういう裏技もあるぞ」とかいったご意見、ございましたらどうかお寄せください。コメント欄にて。