総当たり絵合わせ同定の効能

 近頃,寝る前のちょっとした時間に,旅行先で拾ってきた貝殻を同定して遊んでいる.僕は貝類のことはまったく知らない超初心者なので,「総当たり絵合わせ」で同定するしかない.これを3日ほどやってみて「総当たり絵合わせ」の効能をあらためて実感.
 「総当たり絵合わせ」とは,手元の標本を同定するために,図鑑の先頭のページから最後のページまで,全ての図版と標本を見比べていく方法だ.途中のページで「もしかしてこれかな?」という候補種がでてきても,全然ちがうページに「もっとそっくりなもの」が潜んでいるかもしれないから,ともかく最後のページまで気を抜かずにページをめくる.
 10個の標本を同定するころには10回,図鑑全体を眺めることになる.端から端まで10回ほど眺めてみると,その分類群の全体像が徐々にわかってくる
 また,実物と多数の図版との比較をつづけることで,その分類群の同定のための目の付け所がわかってくる
 それから,図と説明をくり返し見るので,図鑑で使われる専門用語や独特の言い回しの意味が徐々にわかってくる
 これらが総当たり絵合わせの効能だ.
 どんな分類群でも,はじめのうちは総当たり絵合わせをやってみる必要があると思うようになった.検索表を使って同定するようになる前の段階にやっておくべき通過儀礼じゃないかな.
 いまの僕にとっての貝類は,うちの学生(の一部)にとっての植物とおなじ.学生達が学びはじめに感じるもどかしさや楽しさやわくわくを,別の分類群ではあるけど実感してる.この初心者のきもちは,今後,授業を組み立てる上で役立つかも.たまには自分にとって未開の分類群に手をだしてみるのはいいなあ.