図鑑(ここ1年の変化)

 毎年,新入生用に植物図鑑ガイドを作成している.来週の講義で配布するので,更新作業中.
 
 昨年のいまごろは版元品切れ中だった山渓ハンディ図鑑「山に咲く花」は,この3月に改訂新版となって再発売された.同時に,「野に咲く花」も改訂新版となった.大きな変更点はマバリー体系に準拠して再編集されたこと.写真も新しくなっているらしい.価格は,前のバージョンが本体2800〜2816円だったのに対し,改訂新版では本体4200円.妥当な価格だろうとは思うけれど,50%の値上げで学生にはきびしくなった.アマゾンマーケットプレイスでは旧版の中古品が値崩れしている模様.今後,高山に咲く花,樹に咲く花も順次改訂されていくかも.

 信濃毎日新聞社では,「冬芽でわかる落葉樹」が2013年2月に改訂新版となったらしい.

 平凡社の「日本の帰化植物」は,昨年のいまごろは一時的に入手困難となっていたが,いまは普通に買える.

 このほか,昨年度はテンナンショウの図鑑やランの図鑑が出た.
 
 保育社がちょっと不穏.2011年10月に出たばかりの「検索入門 樹木 総合版」(以前の「樹木1」「樹木2」を編集して合本したもの)が発売後2年もしないうちにアマゾンで在庫無し.マーケットプレイスではプレミア価格.版元保育社ウェブサイトの直販では在庫のこり1冊になっていた.しかもキズモノまで販売している.在庫を完全に払底する気のようだ.キズモノまで直販するということは増刷しないってことだろうか.ぜひとも増刷して,この本が入手できる状態をキープしてほしい.というのは,この図鑑は初心者向けの木本図鑑として,とてもよくできた図鑑だからだ(sawagani550の私見).
 この本の美点は,繁殖器官がない状態で同定できること,初心者にも分かりやすい独特の検索キーで種を絞り込んで同定できること,またそのプロセスがとても勉強になること,同定のカギが端的に明記されていること,500種ほどを掲載していて普段みかける樹種はおおむね含まれていること,フィールドに持ち出すのにムリのないサイズであること,など,いろいろある.類書で,信濃毎日新聞社の「葉でわかる樹木625種の検索」があるが,こちらは冷温帯寄りの内容で,西日本で使うには不便.たとえば,ホルトノキやクロバイやミミズバイなどの基本的な照葉樹が掲載されていない.文一総合出版の「原寸イラストによる落葉図鑑」は検索表をたどって同定することができず,初心者に不向き.
 保育社にはほかにも優良な図鑑が多数ある.しかし,検索入門シリーズ,原色図鑑シリーズとも,徐々に版元で在庫切れとなるものが増えている.
 保育社は日本のナチュラリストや科学者を支えてきたすばらしい会社だと思う.これからも,図鑑を提供しつづけてほしいが,同社の近年の刊行物は美容・健康関連の本が主体となっており,いよいよ不穏である.保育社がどうしても図鑑の提供をやめてしまうのなら(いや,やめるのかどうか知りませんが),どっかが図鑑の版権を買い取って継続してほしい.保育社の「私鉄の車両」シリーズの版権をネコパブが買ったように.