インタビューの方法(あたりまえをわすれない)

 研究室の学生たちの卒業研究を振り返ってみると,毎年,自然環境と人との関わりをインタビューで調べる人がいる.淡路のようなおもしろい地域で里地の生態研究をするとき,人から自然への働きかけや,自然から人への恵みについて,その記録が必要となってくるからだ.
 インタビュー調査の成果を学生がまとめていると,いくつかの「しまった」が表面化する.その筆頭が「前に一度聞いたのと同様の話題が語られるとき,それをメモしわすれる」だ.本来,異なる人から同じ話題が語られるなら,そのことに注目すべき価値があるはずだ.同じ地域の人から語られるのか,いろんな地域の人から語られるのか.同じ世代から語られるのか,幅広い世代から語られるのか.細部のバリエーションがあるのかないのか.いずれ興味深い展開があるはずだ.したがって、たとえ同様の情報であっても、語り手が異なるのならば記録するべきだ。しかし現場では,1人目2人目のときは新鮮に思って記録するが,聞き慣れてしまうとついついメモし損なう.普通のこと,自明のこと,当たり前のことは,意識して記録しないと残せない.
 これって,フロラ調査のときに別地点で既出の種を記録しそこねたり,自分のストック写真に普通種の写真が乏しいことと似てる.