ニューサイラン

 ニューサイランは,ニュージーランド原産のリュウゼツラン科の常緑多年草.ヨーロッパ風の庭園によく使われる植物なので,近年のガーデニングブームでは人気の植物だ.とくに斑入りや紫葉,銅葉などのカラーリーフのものが人気だそうだ.
 ニューサイランは別名をマオランまたはニュージーランドアサという.マオランのマオは真苧のことだろうか.名前から察せられる通り,かつては繊維をとるための植物として利用されていた.今年,学生の卒業演習の聞き取り調査で,つぎのことがわかった.淡路島では昭和30年頃まで,漁師が農家に頼んで,里のあちこちにマオラン(地域の人はニューサイランではなくマオランと呼んでいる)を植えてもらっていた.マオランでつくったロープは,綿や麻で作ったロープよりも丈夫でなめらかで腐りにくかったそうで,漁具として重宝されていた.
 この話を聞いた日に,某小学校のすぐそばでマオランの大株をみつけた.その後も気をつけてみていると,島内のあちこちで,大きく育ったマオランをみかける.かなり山の上の方でもみつかる.かつては,浜の漁師は漁具の材料のために山里の農家と交流していたことがうかがえる.
 この話を学生にしたところ,五島列島出身の学生が,「そういえば五島にもマオランがあちこちにあった」と言った.いま,マオランで検索してみると,マオランをロープに加工していたという会社がいくつかヒットして,それらは渥美半島にあったようだ.国内の暖地のあちこちに,マオランを植える地域があったのかもしれない.また,それらの場所は,漁業とのつながりがあるのかもしれない.