くーたん(くんたん)


 この季節,あちこちでくんたん(燻炭)づくりがみられる.野焼きの煙が灰色だったり黒かったりするのに対し,くんたんの煙は白または青白い.この写真は調査ででかけた但馬で撮影したもの.ここのおじいさんは,「くーたん」と呼んでいた.くーたんは,イネのもみがらを焼いて炭化させたもの.この地方ではもみがらのことを「すくも」と呼ぶらしい.くーたんは土壌改良材として畑の土にまぜたり,苗代(イネの育苗箱)に入れる土に混ぜたりするという.とくに育苗箱に使う土は毎年購入するものらしく,安くあげるためにも籾殻くんたんを多く混ぜるのだとか.1:1よりは少ない比率だそうだ.
 くーたんをつくるには,午前中にはじめて夕方に完成するくらい時間がかかる.昼過ぎにはじめると終わるころには暗くなるので失敗の原因となる.途中,角スコップ・ヤマカキ・竹箒などを使ってもみがらの山を攪拌しながら焼いていく.ある程度黒い籾の割合が多くなったら,山を崩して厚さ10cmくらいに広げる.そうすると,まだ炭化していない黄色いもみがらも徐々に焼けて黒くなっていく.全体が黒くなったら水を掛けて火を消す.水をかけずに放置すると灰になってしまう.
 くーたんづくりの横にたっていると,香ばしい香りがする.もみがらの中にはコメが入ったままのものも少しは混じっているので,それが焦げるにおいだ.
 今は,くーたんづくり専用の煙突を真ん中に立てているが,むかしはわらを立てていたそうだ.もみがらの山にわらを刺し,その上端に火を付けたそうだ.