ひどい分煙

 インターンシップの学生を受け入れてくれる会社に打ち合わせに行った.
 打ち合わせがおわったら昼時だったので学生といっしょにパスタ屋へ.禁煙席に案内してもらった.ちょっといやな予感.ついたてを挟んで向こう側にあるテーブルはもしかして喫煙席ではないか.果たして,ついたての向こうの客はたばことライターを取り出した.僕のテーブルとついたてはぴっちりと接しており,ついたての裏側では喫煙席のテーブルがぴっちりと接している.ついたての高さは,いすに座っている僕の肩くらいまでしかない.これでは喫煙者と相席しているのと変わりがない.ひょっとしたら空気の流れがデザインされていて煙りがこっちにはこないのかと期待したが,ついたての向こうが風上であった.煙は秒速20cmの気流に乗って水平にながれてきた.
 1990年代のなかごろはまだ飛行機でもたばこが吸えた.出張帰りの飛行機(たしか四国と大阪を結ぶ便)で禁煙席の最前列に座ったことがある.ひとつ前の席はもう喫煙席だ.このときは前の人も右前の人も左前の人もみんないっせいにたばこを吸いはじめ,たいへんつらい思いをした.窓を開けて欲しかった.そのころ日本は喫煙者に優しい国で,たしかキャセイパシフィックなどは日本便のみが喫煙可だったように記憶している.
 このパスタ屋でも1990年代の飛行機でも,禁煙席は文字通り「たばこを吸えない席」でしかなかった.僕がもとめる禁煙席は「煙が来ない席」だ.僕に限らず禁煙席を選ぶ人は,きっと前者ではなく後者の意味での禁煙席を求めていると思う.