アボガド

 アボガドのマヨネイズ和えを食べていたら,向かいの席から「アボガドって何科?」との質問が.
 「○○って何科?」は定番の質問で,こういうときのために(?)食卓のそばに「食材図典」が置いてある.
 さっそく調べてみたら「クスノキ科」とあった.あまりに予想外の科だったので,ちょっとした衝撃だった.


 僕がはじめてアボガドを食べたのは1980年前後,もしかしたらそれよりちょっと前だったと思う.夕食のあとで母親が「これアヴォガドゆう栄養ある果物やねんて.森のバターいうらしいで」といって,どこかでもらったのかアボガドをみせてくれた.それから「どないして剥くんやろ」とつぶやきながら,ともかく切り分けて,食卓に置いた.僕はどれほど甘い果物だろうかとおそるおそる口に入れて,あれ?と思った.いまたべたところは芯かなんかで,味のないところなんかな.もう一切れたべてみた.あれ?「なんか,あまくない.もういらん」 妹も母親も,「ほんまやな.アヴォガドおいしないな」「緑やし,まだ熟れてへんのかな」「もうアヴォガドは買わんでええな」と家族みんなでひとしきりがっかりしたのだった.
 あのころ,甘くない果物があろうとは思いもしなかった.デザートではなく,おかずとして使う果物があろうとは考えもしなかった.
 うちの家族がものを知らなかったのではなく,世間全般,いまほど情報があふれておらず,輸入食材や外国の食文化には疎かったのだろう.そういう時代だったんだと思う.なんせスパゲティはナポリタンとミートソースしか知らなかったし,それどころか「スパゲティって,ゆでたあと水で締めへんのが正しいらしい」などという新知見を披露しあっていた時代である.あれ?うちだけおくれてた?
 ともかく子ども時代のこの1件以来,アボガドにあえて近づこうとは思わないまま大人になった.自分でわざわざアボガドを買ってたべるようになったのは,ここ数年のこと.誤解がとけるのに30年近くを要した.

【追記】コメント欄でmatsut氏がアボガドと同属の植物の写真を紹介してくれた.matsut氏が2004年にカナリア諸島を旅行したときのもの.コメント欄ではリンクを貼れないようなので、ここから張っておく.matsut氏のカナリア旅行の写真:植物編