卒業研究発表会

学生たちの卒業論文発表会があった.ぼくの受け持ちの学生3人は,会心のできばえだった.
プレゼンのもともと上手かった人はもちろん,最初はすごく苦手だった人も,きちんとした発表ができていた.質疑応答も丁寧かつ適切にできていたと思う.

ここしばらく,学生は卒業研究の仕上げにおおわらわだった.来年以降の自分のためにメモをのこす.

本校の卒業研究の仕上げは,2月初旬に卒論要旨(4ページ)を提出,中旬に予備審査,下旬に論文提出,その翌日に発表会,以上4段階である.
12月中旬ごろ.まずは論文を書き進めた.要旨をかくまえに論文本体を完成させるべきと考えたからだ.
1月上・中旬.いよいよ論文書きにエンジンがかかる.論理の展開などについてはしばしば議論を繰り返した.
1月25日ごろ.要旨(4ページ)の締め切りが近づいてきたことから,要旨作成にシフトした.先に論文本体を完成させる目論見は崩れ去る.
ただし,論文をまとめるために論理の展開はそこそこ練られている.これをもとに,十分ではなかったところを,練る.
1月29日.部門のゼミで,要旨の途中経過を公開.それに対する意見交換をした.
2月4日.要旨原稿提出.1月25日から提出までの期間は,「論理をつなげること」や「目的と結論を明示的に呼応させること」を具体的に理解してもらえるよう,何度も朱入れをした.「論理」について学ぶよう,研究に着手した3月・4月ごろから書籍を紹介して自習をすすめていたが,結局は論文を書く作業によってはじめてそのことを意識し,身につけ始めたように見受けられた(秋にきちんとした中間レポートを課したほうがいいかもしれない).
2月5日から.予備審査のためのプレゼン作りを開始.この段階で,プレゼンが苦手だった人は,かなり苦戦した.わかるように話す.伝えるための方法を僕と学生といっしょに考えながら,プレゼンの改稿をつづけた.
2月9日.予備審査.予備審査の場で,副査の教員からいくつかの注文がついた.有益な指摘が多かった.ここでの指摘は論文本体をまとめる上でも大変役立つものだった.ともかく先の見通しがたったということで,研究室のメンバーでちょっといいダイニングバーで食事会をして慰労.
2月10日から.予備審査での指摘を受けてプレゼンのまとめ直しと論文本体の執筆.まずは審査時の印象のあるうちにプレゼンの修正.これにはまる1日〜2日を費やした.のこりの日々は論文書きに注力した.3人の学生からあがってくる論文原稿に,朱をいれていった.てんてこまいで,2月の9日以降今日まであっというまに時間がながれた.僕は要領が悪いので,最後の1週間は,ほかのことをする時間はほとんどとれなかった.
 いや,そんなことはない.ときどき学生たちとコーヒーの手網焙煎をして,気分転換をした.寒空の下,フキノトウさがしの散歩にもでかけた.それは論文書きにつかれてきた学生たちが散歩にでかけるといいだしたので,ぼくもいっしょについて行ったのだった.そういうことはしていたが,それでも学生たちはがりがりと論文にとりくみ,ぼくはそれにつきあえるだけつきあった.たのしかった.
2月23日午後4時.論文提出締め切り.みんな無事に提出できた.一人はぎりぎりだったが.あとは翌日の発表会のみ.学生たちはおそくまでプレゼンの修正に励んでいた.プレゼンが苦手だった人も,この段階では,もうだいぶ上手くなってきていた.学生は,ずいぶん言葉を大切に扱うようになってきた.こっちがおどろくほどだった.
僕が学生にしたアドバイスはつぎのとおり.
・まずは,時間を計りながら,通しで声に出してプレゼンを試行する.
・うまくしゃべれないところ,ひっかかるところをみつけだしたら,説明のしかたを修正して,また口に出して試行する.時間が大幅にオーバーするようなら,全体の構成もみなおす.きっとどこかに無駄がある.
・時間を計りながら声に出して練習することと,それをうけての修正をくりかえす.3回〜5回もくりかえせばかなり良くなる.苦手な人はもっとやる.
・読み上げ原稿は書かないほうがいい.かわりに,各スライドで何をどういう順で話すかの簡単なメモはつくる.これは,説明のしかたを修正するときにも使いやすい.また,本番ではお守りになる.
・悪いプレゼンのパターンがあるので,それにはまらないよう指摘した.
  その1・つなぎや道しるべになるような言葉(接続詞や,その役割をする言い回し)が足りないとわかりにくい.
  その2・大枠を話さず細部から話すとわかりにくい.
  その3・主張よりさきにエクスキューズがあるとわかりにくい.これをやるとどうしても逆茂木型文になる.
・本番前は夜更かしをしない.寝不足は発表の足をひっぱる.
・聴衆を見てしゃべる.

今日2月24日.最終発表会.受け持ち学生3人はそれぞれの個性を発揮して,会心の発表をした.僕はほっとした.みんなまじめにプレゼンの改訂にとりくみ,読み上げ原稿をけしてつくらず,伝えるためにどうすればいいかを考えながら練習したあとが伺えた.

夕方までに18人の学生の発表がすべておわった.そこから30分間,学校の重鎮教員による審査会議が開かれ,優秀発表者が決定した.表彰式では僕の受け持ち学生の名前がよばれた.最優秀賞だった.よかったね.

学生たちは,卒業までにやるべきことは,ほとんどのこっていない.あとは卒業式だけだ.
今朝までは,研究室には学生がやってきて,研究をまとめるのに一所懸命だった.あしたから,あの机はしばらく主のいない机になるはずだ.ちょっとさびしいかんじがするな.