ヤブガラシは藪枯らしじゃないんじゃないか?

 先月の小学校での環境教育のときに,僕はこっそりヤブガラシの実をたべてみた.僕が味わったヤブガラシの実はまだ緑色で十分に熟してはいなかった.でもブドウ科だからひょっとしたら甘いかも.
 その考えが甘かった.ヤブガラシの緑色の果実はえらく辛かった.トウガラシのような舌にくる熱い辛さ(ヒーヒーいう辛さ)ではなく,ヤナギタデに似た口蓋から喉にくる乾いた辛さ(カホッとなる辛さ)だった.薬味として通用しそうな辛さだ.
 もしかするとヤブガラシの語源は,よく言われているような「藪枯らし」ではなく「藪辛子」ではないか?
 ヤブガラシの味を知っている人は,ヤブガラシを見たことあるだけの人よりもずっと少ないだろう.このため,種名の由来を推測する人の多くは,視覚的な特徴にとらわれ,味覚的な特徴を見逃すだろう.その結果「藪枯らし」が民間語源となって巷間広く伝わったのではないだろうか.
 「藪枯らし」を否定したくなるもうひとつの理由.ヤブガラシはたしかに藪を作っている植物を枯らすかもしれないが,その結果,自らが立派な藪となる.それではちっとも藪を枯らしたことにならない.「ニワガラシ」とか「ハタガラシ」などという名前であったなら「枯らし」を支持しよう.しかし,自らが立派な藪をつくるものが「藪枯らし」ではおかしい.旺盛な繁茂から名を取るならば「ヤブヒロゲ」とか「ヤブシゲリ」などが妥当ではないか.
 また,ヤブガラシ以外の「なんとかガラシ」はたいてい「辛子」である.イヌガラシ,タガラシ,カキネガラシなど.


 世間の意見はどんなものか.ぐぐってみた.今日現在,「”ヤブガラシ”+”藪枯らし”」は約1290件,一方,「”ヤブガラシ”+”藪辛子”」は約41件.旗色悪し.しかも41件の上位数件をみてみたら「”藪辛子”だと思っていたけど,本当は”藪枯らし”だったのね」といって,いままさに「枯らし派」の軍門に下らんとせんものが占めていた.旗色ますます悪し.
 とりあえず,いっぺんヤブガラシあじわってください. 


 この秋は,このリンク先「仕事日誌」11月1日分の影響を受け,ヤブガラシに限らず,被食動物散布型とおぼしき果実をいろいろ舐めたりかじったりした.いろいろ味わったなかには,イヌホオズキもある.有毒とのことだが,ちょっとくらいだいじょうぶだろう.イヌホオズキはおいしくはないが,ほのかに甘かった(何イヌホオズキだったかは失念).一応有毒だから自己責任で自分だけ味わった.児童にはたべさせていない.ほかにも,ハナミズキやナンキンハゼやクサスギカズラやサンシュユなど,いろいろ試した.でも甘い物に出会うことはほとんどなかった.よくて無味に近い.悪ければ渋い.まだ未熟な果実を味わったせいかもしれないが.