気になるコトバ

 前々から思っていたことだが,「わが国」という言葉が気になる.「わが国の主食はコメ」みたいに使われる「わが国」である.政府行政機関の発行する文書や,日本の大臣のような明確に日本の属性をもった公人の発言においてこのコトバが使われているのならいい.が,私人がこれを使っているときにはちょっとひっかかりを感じる.
 日本語における「わが国」というのは「日本国」の同意語だと思えばよいのだろうが,けつのあなのちいさい私は,字義通り“わたしのくに”と解してしまう.「日本」といえば固有名詞であって何を指すのかはっきりしている.「日本では大晦日に除夜の鐘をきく」.誤解の余地はない.それにひきかえ「わが国」(=わたしのくに)という言い方は相対的で,どこの国を指すのかがわからない.例をあげよう.日本人である私がつぎの発言をする.「わが国では人々はキムチをよくたべる」.いいたいことは「日本人はキムチをよくたべる」ということである.じっさいよく食べているので,おかしな文章ではないとおもう.でも,この文章だけをみたら,別の国を頭に描くひとがけっこういるのではないか.
 そんなわけで,例がむちゃくちゃなような気もするのだが,僕は自分が書く文章で日本を指したいときには「わが国」と書かずに「日本」と書くようにしている.ぼくがどの国に属しているかなんか,だれもしらないもの.
(発言者が有名人でその人の属する国を多くの人が認識している場合には「ぅわーたしの国でぅわぁ」といった相対的な表現でも特定の国が想起される)