壁を作るひとこと

 「○○ってどうやってやるの?」とか「××って何?」っていう質問に対し,「ああ,それはむずかしいんだよねー」とか「それ,けっこうややこしいんだけど」っていう一言を冒頭につけて回答・説明をする,という例をしばしばみかける.
 この冒頭の否定的ニュアンスを含んだ言葉は,人にものを教えるにあたって,まったく不要であるばかりか,害悪ですらあると僕は考える.
 孵化したひよこちゃんが最初にみた動くものを親だと思うように,最初に入ってくる情報による刷り込みパワーはすごい.回答のしょっぱなが否定的ニュアンスを含んだ一言であった場合,質問者は「それはむずかしい」「それはややこしい」ということをまず理解するだろう.人によっては「むずかしいならもういいや」などと考え,そのあとの説明を聞き流すかもしれない(僕だけか?).否定的ニュアンスから始まる回答は,せっかくの「やってみたい」や「知りたい」をまず萎えさせて,理解に対して壁をつくっているのではないか.回答者は「むずかしいからしっかり聞いて理解してくれたまへ」というつもりでそういうことをいうのかもしれないが,逆効果ではないか.そもそも,そのことが難しいかややこしいかそうでないかは,回答を受け取った側が判断することだ.回答者は質問者の理解力を勝手にあなどったらあかん.
 というわけで,僕は,否定的ニュアンスから回答をはじめることはやめようと思う.
 (なお,このことは,どんな質問に対してもかるがるしく,わかったふうに答えよう,という意味ではない.わからんこと・しらんことを聞かれたときには,「わからん」「しらん」と即答したい)
 (もうひとつ追加.上の文章では,僕は,質問者のチャレンジ精神をあなどっているのかもしれない.でも,質問者のチャレンジ精神をより引き出すためであれば,また別のいいまわしがあるように思う.)
 (さらに追加.質問者の側にたつときには,冒頭の否定的ニュアンスにまどわされず,その後につづく回答本編をきちんと理解するようにつとめたい)