ハンカチノキ(ヌマミズキ科)のタネ

 ハンカチノキは中国原産の落葉樹で,植物園などにときどき植栽されている.勤務先にも数本ある.かつてはハンカチノキ科として1科1属1種だったらしいが,その後,ミズキ科をへてAPG2ではヌマミズキ科に整理されている.
 この秋,他の樹種に先駆けて落葉した.ソメイヨシノとほぼ同時期かやや遅いくらい.落葉の早い樹種らしい.
 そして例年になくたくさんの果実が実っている.枯れ枝にぶらさがる多数の球形の果実.おそらく被食動物散布だろう.ピンポン球のような大きな果実を運ぶのはだれだろう.サルか鳥か.どんな味がするのかが気になって,まだ固い果実を囓ってみた.水分含量はリンゴのような感じで,固さはリンゴよりうんと固い.固く締まった果肉から酸っぱくてわずかに甘い果汁が滲みだしてきた直後,猛烈な渋みが口にひろがり,口中がごわごわざらざらになった.タンニンだろうか.でも3分もすればごわごわは消える.おもしろい感覚なので1年生の女子学生にお勧めしてみたら,不快な渋さだったらしくておこられた.
 囓った断面をみてみると,中のタネが少し顔をだしている.タネを取り出すべく,渋さに耐えながらごりごりと囓っていったが,だんだんと口の中に麻酔がかかったようになって,ろれつがまわらないし,囓ることも困難になってきたので,原始人のような方法はあきらめ,途中からはナイフとブラシをつかって文明人の方法でタネをとりだした.
 でてきたタネはとてもおもしろいカタチをしている.レモン型で,長手方向に16本の稜が平行に走っている.正面からみてみると,太めの稜8本が45度ずつずれて走っていて,その間に細めの稜が1本ずつ.規則正しくて美しい.おまけに大きくてずっしりと重くて水には沈む.すごく惹かれる.アクセサリーの素材によさそう.ちょっとあつめてみようかな.
 写真のタネの長径が27mm,短径が20mm.