マダニ

 マダニについて書く.ヒトやイヌの体表に寄生して吸血するあのマダニのことを書く.そういう話が苦手な方は,この先をよまないほうがいい.
 それから,僕はとてもジェントルなので,このウェブ日記では男子小学生がよろこびそうな下の方の話題は禁じてきたが,今日だけはその禁を破らざるを得ない.したがって,男子小学生がよろこびそうな下の方の話題が苦手な方もこの先をよまないほうがいい.この先へは自己責任で進むこと.読後に文句いわないでください.(ここまで書いたら出オチ感が否めない)
 
 マダニに咬まれた.
 シャワーを浴びているときに,体のある部位にちいさなイボ状の突起があることに気付いた.最初は吹き出物か血豆かと思ったが触ってみるとその突起は妙に硬い.裸眼では何も見えないのでメガネをかけてみたが,ちいさすぎてよく見えない.体を折り曲げてその部位に目を近づけようとするが,前屈の柔軟性に限界があり顔を近づけることができない.その部位は,古事記的に表現すれば,なりなりて成り余れるところである.
 場所が場所だけに何が起きているのか少々気になるので,デジタルカメラで接写して確認することにした.このカメラは広角端ではレンズ先端から1cmでもピントが合うので,デジタルカメラを自らの成り余れるところに約1cmまで近づけてマクロ撮影を試みた.こんなところを撮影するのは,うまれてはじめて.ふしぎと気恥ずかしい.風呂場の薄暗がりのため最初は手ぶれがひどかったが,ISO感度を上げてどうにか識別可能な1コマを撮影できた.
 デジタルカメラの3インチモニターで拡大表示してみると,丸く平たいボディから節くれだった脚が数本.まちがいなくマダニの仲間が写っていた.しかしその写真にはマダニに本来あるはずの頭部の突起が写っていなかった.それはつまり,このマダニ個体は頭部の突起(すなわち口器)を僕の成り余れるところの皮膚に深々と突き刺して吸血中であることを意味している.
 このマダニは,おそらく3日前の木曜日,学内の草原か裏山のどちらかで僕に取りついたのだろう.昨日の夜はきっと僕のパンツの中で矢野顕子を聞いていたにちがいない.
 マダニに咬まれたら病院で取ってもらう,というのがオススメされている.へたにひっぱると口器が皮膚に残ったりするためだ.しかし,過去にマダニにかまれた友人達はみな自力で,口器も残さずに引っこ抜いている.それにマダニの体はびっくりするほど丈夫で,引っ張ったくらいでは簡単に潰れるとは思えない.
 そこで,とげ抜きでこのマダニの腹部あたりをつまんでみた.すると簡単に,いとも簡単につぶれた.やっちゃった.
 しかしよく見ればまだ頭部の一部が皮膚より突出している.ここをとげ抜きでつまんでもういちどひっぱった.皮膚がゴムのようについてきたが,やがてぱちんと音がして引き抜けた.とげ抜きがつまんでいる獲物を,なくさないうちに標本にした.あとで実体顕微鏡でみてみると,無事に口器を引き抜けた模様.風呂上がりに化膿止めをぬりこんでおいた.
 以上が今朝のできごと.夜になって,患部に痒みを感じる.蚊に刺されたときのようにぷっくりと膨らんでもいる.成り余れるところに局所的に痒みがあり,なんというか,きもちよくありません.あと数日後に熱がでなければいいが….