小学校でため池の授業

 近所の小学校で1〜3年生を対象とした環境学習.今回のテーマはため池.昨年もこの学校ではため池の授業をやっている.昨年は,児童をため池に親しませる目的で,ため池で生き物採りをたのしむ内容だった.今年は,うちの学生N君が「ため池の生活文化」をしらべているので,その内容と絡ませた.面白そうなことをどんどんぶちこんだら盛りだくさんな内容になって,ずいぶん楽しかった.N君の活躍があって実現したプログラム.僕はといえば,自分の専門とはちがうところで勝負しているので,ほんのちょっとうしろめたいキモチがあるが,楽しかったし,意義あるプログラムなのだからいいのじゃ.

下見
 本番2週間前に下見に行った.下見に行く前から,今回はため池の生き物に生活文化を絡ませた内容にしたいという思いはあった.対象とする小学校から徒歩圏内にあるため池をみてあるいてたら,ちょうどドロ流しのために水をぬいている池があった.ドロの中にはタニシがいた.タニシの煮付けをたべるプログラムができそう.さらにこのとき,「シバづけ漁」のしかけが置かれていることに気付いた.小枝の束を水に沈めておき,そこに入り込むエビなどを捕る漁法だ.通りかかった地元の人から「あれはMさんがやってる」という情報を得た.

事前打ち合わせ
 小学校で,3年生担任のN先生と打ち合わせ.ため池の生き物と生活文化をテーマとすることで了承を得た.おおまかな流れとして,前半はため池でいきものをつかまえてあそぶ.後半はつかまえたいきものを食べる,ということに.
 生き物の捕獲は,児童が自分たちでつくったしかけでやると楽しいので,ペットボトル製のもんどりでおこなうこととした.もんどりづくりは本番前日に授業中にやっておいてくださるとのこと.
 また,本番前に,児童に宿題を出すこととした.宿題は,父母および祖父母へのインタビュー.N君の研究でわかってきた「ため池の生活文化の定番」から7項目をえらび,祖父母世代および父母世代にそれらの体験の有無を聞く.ついでに,ため池の楽しかった思い出もインタビューしてもらうこととした.翌週,インタビューの用紙を作成し,小学校に送付.
 ため池管理者への事前連絡と授業での利用の許諾等はN先生におねがいした.淡路島の田んぼやため池で環境教育をするときは,事前に小学校から地域に連絡をしてもらうことにしている.小学校は地域社会の1つの核なので,たいていの場合,たいへんスムーズに事がすすむ.

直前準備 〜N君の活躍〜
 ペットボトルのしかけだけじゃなく,できれば地元につたわる方法でも生き物を捕りたい.下見のときに偶然みかけたシバづけ漁,あれを子供達とやってみたい.そういうハナシをN君としていた.N君,本番の2日前に現地へ行き,シバづけ漁をやっていたMさんをさがし当てて聞き取り調査を実施.翌日にシバづけ漁のやりかたを詳しくおしえてもらえることとなった.翌日(つまり本番前日)N君はMさんからやりかたを教わり,ついでに,環境学習をおこなう池にしかけて帰ってきた.
 このときシバづけ漁についてわかったこと.地元では単に「しかけ」と呼ぶ.シバづけ漁などのとくべつな呼び名はない.ねらっている獲物はエビ.このエビは海釣りの釣り餌として使う.池にはエビが2種類いる.地元呼称で「しらさえび」と「もえび」.しらさえびは肉食で,もえびは草食.エサをつかわないしかけ(シバづけ)では,草食のエビが(も?)採れる.しかけに使う小枝はどんなものでもいいが,スギの枝は何度でも使えるので都合がよい.
 前日夕刻,小学校と電話うちあわせ.宿題のインタビューで祖父母世代からタニシがおいしかった話を聞いた児童らは,「タニシをたべる」ことに興味津々になっているとのこと.これはぜひ食べさせてあげたい.ところが,本番で行く池はタニシがいないかも(少し離れた別の池にはいるが,授業ではそこまで行く時間はない).それで夕刻,N君はタニシを大量につかまえに行ってくれた.本番の池でタニシがとれなかったときは,このタニシを食べよう.
 前夜,N君と僕とで冊子づくり.

本番
 授業をおこなうのは10時25分から昼休みまで.10時すぎに小学校に行き,宿題のインタビュー内容を読ませてもらい,定番生活文化の体験の有無を集計.みごとに祖父母世代と父母世代の間にギャップがある.50〜70歳代の祖父母世代はため池で泳ぎ,ため池の恵みをたべていた世代.30〜50歳の父母世代以下は「ため池であそんじゃだめ」といわれて育った世代.
 授業をはじめ,子供達と池へいく.池の管理者のIさんも来て下さった.池には前日にN君がしかけた枝のたばが4つ.そのまわりで子供達がお手製のペットボトルのもんどりをしかける.夢中になってヨシノボリやエビをつかまえる.とれたエビはほとんどがスジエビだと思う.ヌマエビの仲間が少々まじる.Iさんは,スジエビの方を「しらさえび」と呼んでいた.おそらくヌマエビの仲間が「もえび」なのだろう.やはりタニシはいなさそうだった.
 子供達はエビ採りに夢中.ペットボトルでも捕れた.そして,前日からしかけていたしかけでも捕れた.ペットボトルはスジエビばかり.シバづけのしかけでは,スジエビのほうが多かったがヌマエビ類も捕れた.
 子供達が「エビかわいー.このエビたべたいー」と言ってもりあがってる.じゃあ,エビたべよっか.ということに.N君の聞き取り調査では,この地域では池のエビは食べる対象ではない.しかし,淡路市でも山間集落では池の「しらさえび」を食べることはふつうにおこなわれていた.N君のタニシだけを食べるのだと,「捕って食べる」にならないのでひっかかっていたが,児童らが自ら「捕ったエビをたべたい」と言ってくれたので,よい展開となった.
 エビをもって家庭科室へ.昼休み.給食をたべつつ,タニシとエビを調理.おいしくたのしくいただいた.
ペットボトルでエビをとる
シバづけのしかけを回収
タニシの殻から身をとりだす
エビは炒めて塩をふった