草原をつくる演習

 朝からの雨でコピー室の湿度が高かったせいか,レジュメをコピーしている最中に何度も紙詰まりがあってあせった.とりあえず,なんとか間に合った.雨は昼頃からは小康状態.というか,ときどき小雨がふるけれど,雨具が必要なほどではない.
 3コマ・4コマをつかっての演習は,半自然草原をつくるという(だいそれた)もの.もちろんこの2コマでできるわけでも,この学年の単年度でできるわけでもないので,もう少し長いスパンで,学生の代を継承しながらやっていく演習となる.
 学内の造成地斜面には,外来牧草であるネズミムギによって緑化された場所がある.開学から10年たった今も初夏まではネズミムギが優占している.この斜面では,年に2回の草刈りを実施している.どうせ刈り取りによって草原を維持するのなら,近隣の半自然草原と同様の種組成をもったものにしたほうが,里地里山生物多様性保全する上ではよいだろう.ということで,この外来牧草草原を,在来のチガヤ草原またはススキ草原へと転換していくのがこの演習の趣旨である.今年度は4回の作業(調査や草刈りなどいろいろ)を予定している.演習で小規模な実験をおこないつつ,順応的管理をやっていこうとしているところ.
 緑化された斜面をよく観察してみると,コメツブツメクサとネズミムギがそれぞれ等高線にそって縞模様を描いている.吹き付けではなく,種子を仕込んだシートによって緑化が行われたのかも知れない.
 今回は,まず,半自然草原づくりをおこなう施工区と比較対象とする対照区を設定し,それぞれで現在の植生を把握するための調査を実施した.つぎに,施工区ではネズミムギの刈り取りをおこなった.例年,この斜面での1回目の草刈りはネズミムギの種子が散布されたあとの6月か7月に実施されているが,1回目の草刈りを種子散布前にしてみたら少しは抑制できるんじゃないか,というもくろみである.ネズミムギの種子寿命については,1年〜4年という報告がいくつかあり,7年以上という報告もあるようだが,結実前の刈り取りで抑制できる可能性はあると思っている.
 2コマの講義で,趣旨説明・現場での調査,刈り取り作業,後片付けをやって,ぎりぎりだった.調査では全部で9個のコドラートで植生とネズミムギの稈数を調べた.ネズミムギの稈数は,すくないところで500ちょい,標準的には1000以上といった感じだった.ほんとうは15個のコドラートでやりたかったけれど,時間的にそれは無理だったろう.