片野鴨池

 課外授業で石川県片野鴨池の見学.マガンやオオヒシクイトモエガモなどの越冬地で,ラムサール登録湿地,県の天然記念物などに指定されている.加賀市の設立した観察館があり,日本野鳥の会が委託されて館を運営している.課外授業の目的は,ここで,湿地の保全とワイズユースの事例を見学すること.同時に,マガンの群れのねぐらいりやねぐらからの飛び立ちの壮大な景色を楽しんでもらおうというもくろみ.
 事前に,レンジャーの方に,保全とワイズユースについての講義をお願いしていた.また,館の職員のおじさんから,マガンのねぐらから飛び立つ時刻,ねぐらいりの時刻を大まかに聞いていた.
 さて,その聞いていた時刻に合わせて学生たちと鴨池に集合したが,残念ながらねぐらからの飛び立ちはすでに終了していたようだ.開館してから池に残っているオオヒシクイやカモなどを観察し,保全とワイズユースについての講義をレンジャーの方にしていただいた.鴨池の歴史について,また,最近の活動について興味深い講義をしていただいた.鴨池の古い航空写真をみれたこと,池の奥に昔に掘られた水路(暗渠)があるのを知ったこと,池の植生遷移を食い止める管理を坂網の猟師さんたちが主にになっていることを聞けたことなどが,僕にとってはおもしろかった.レンジャーの方々は,市民や周辺の農家の方々に,鴨池のことを知ってもらおう,ファンになってもらおうと,いろいろな活動を考えて実行に移されていた.使命感をもって仕事をする人なしに保全は進まない.ラムサール登録湿地にしたり天然記念物に指定したりするだけでは十分ではない.結局,保全は人なのかもしれない.猟師さんたちの高齢化は,今後の保全の担い手をどのように確保していくのかという点で,考えさせられるものであった.
 この池にはもう10年以上前から毎年通っているが,来る度に観察館横のハンノキ林が成長しているのがわかる.放置したときに10年ほどで中〜高林が成立するほどの速度であることがわかる.
 しばらく観察館にいたが,昼頃のねぐらいりは今日はどうやらなさそうだ.どうも事前におじさんから聞いていたマガンの行動パターンは,渡来直後の頃のパターンのようだ.11月初旬ともなると,ねぐらからの飛び立ちは夜明け後の20分ごろ,ねぐらいりは17時前というのが正解らしい.学生たちにマガンの大群を見せてあげられなかったのは残念だった.あのような,自然のすごい風景をみて,音を聞くことは,とてもよい体験だと思うので.前日に訪れたときに,飛び立ち時刻をレンジャーの方からも聞いておけば良かった.これは僕の失敗である.たいへん悔やまれる.
 片野海岸へ行って,ハイネズの自生環境を見て解散.
 僕を含む講師陣およびゲスト講師陣は回転寿司(太平)で昼食.食後に未練がましく鴨池を再訪したところ,カリガネの家族群が池に戻ってきているのに出会った.観察館から近い距離で,フィールドスコープ越しにアイリングもしっかりと観察できた.学生たちがまだ近くにいるのならぜひ見てもらおうとおもって,ケータイに電話したが,彼らはすでに北陸道を南下中.残念.
 参考:2008年1月2日の日記