塩湿地が浚渫された

 島内某所の塩湿地.埋立地と元の海岸線の間の水路状の部分に砂泥が堆積し,塩湿地が成立しうる絶妙な環境(つまり,波浪の影響はないが潮の干満の影響は受ける環境)がととのっていた.2年前に訪れたときには,ハママツナ,ホソバハマアカザ,アイアシなどの塩湿地特有の植物が比高に応じたゾーネーションをなし,ハママツナ最前線より下位ではハクセンシオマネキなどのカニがひしめいていた.
 ひさしぶりに尋ねてみたら,浚渫がおこなわれていて塩湿地植生がなくなっていた.掘削した土砂を両側につみあげて,さらに整地されており,掘削部分だけでなく全体的に植生が破壊されたようだ.攪乱を受けた場所に植物がまったくみられないことから,工事がおこなわれたのはつい最近のことと思われる.
 現状で塩湿地の生物がどの程度残っているのか気になったが,もう夕方だったので調査はできなかった.今後どのようなプロセスを経て回復していくのか,あるいは回復しないのか,回復のソースがどこにあるのかといったことも含めてとても気になる.今シーズンのうちに工事直後の植物相と植生データをおさえておきたい.
 この塩湿地は,上記の他にも多様な生物が生息・生育しているため,兵庫県版生態系レッドリスト(2011)でAランクの生態系として指定されていた.そのような場所で,生き物への配慮があまり感じられないやり方で浚渫がおこなわれた.もしかするとレッドリストの指定状況が海岸管理者に十分に周知されていなかったのかもしれない.実際のところ,公表されているデータ(印刷されたレッドデータブックとウェブサイト)だけだと,大縮尺の図面が添付されていないので,重要な生態系の位置を正確に把握することは困難だ.
 悔やまれる事態.教訓としなくては.そして,今何をしたらいいのか.
 
↓2011年夏

↓2013年秋